2000 Fiscal Year Annual Research Report
聾者と健聴者における第二言語としての音声言語と手話言語の実践的修得
Project/Area Number |
11610557
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
渡邉 正憲 鳥取大学, 教育地域科学部, 助教授 (90032325)
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Keywords | 手話 / 手話コミュニケーション / 音声言語 / ドイツ手話 / 聾者 / 聴者 / 言語的少数派 |
Research Abstract |
私が自称する「手話コミュニケーション論」に込める意味は、第一に手話を人間の言語と認知すること、従って、手話を使う聾者や難聴者を「障害者」ではなく、音声言語と対等の手話を自然言語とする「少数派」minoritiesであると定義すること、第二に手話は日常生活におけるコミュニケーション活動の中で存在意義を最も発揮する視覚言語であること、従って、音声言語の研究では一大領域になっている言語内の構造分析を手話研究も必要としながら、しかし、聾者と聴者の実践的な手話による交流に直接に寄与できる研究でなくてはならないこと、第三に聾者としての実存が手話言語に投影されている人間的位相を常に手話研究に随伴させることを表している。 これに立脚して、今年度は手話言語における10のメルクマールを提起した。それは未だ確立した名称ではない次の項目である。(1)文法性、(2)造形性、(3)音声言語対応性、(4)可逆性、(5)同時性、(6)空間性、(7)複合性、(8)同型異義性、(9)異型同義性、(10)非手指動作性。 今年度は最初の4項目を論文で著した。発表雑誌はドイツ語学の研究誌であるが、これは次の2つのことを意味している。一つは、手話学を言語学の一分野とする研究組織が欧米の大学では浸透しつつあるが、日本はまだ皆無であり、そのパイオニア的な一歩を試みたこと、二つ目は、手話の国際的な比較研究が欧米諸国では常態にある中で、日独手話の位相を比較した日本で最初の本格的論究であること。しかし、最重要な「文法性」を始め、全項目が試行錯誤の域を出ない分析段階である。 なお、研究補佐の野崎美智代氏(聾)や教材ソフト等による手話の実践的な修得に今年度も継続して努めた。手話と英独語ができる手話言語学の研究者は希有であることを研究成果の隠れた事実として今年度も同じく付言しておきたい。
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Research Products
(1 results)