2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610572
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大貫 隆 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90138818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水谷 智洋 東京大学, 名誉教授 (10011321)
本村 凌二 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (40147880)
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Keywords | ギリシア神話 / ローマ帝政期 / 見世物 / 死体 / 性 / 死 / 生 / 初期修道制 |
Research Abstract |
研究分担者水谷智洋は昨年度末をもって定年退職となっているが、引き続きギリシア神話に現れた欲望と禁欲の言語表現を中心に研究を進めたが、体調不良で必ずしも生産的ではなかった。 研究分担者本村凌二はローマ帝政期の欲望と禁欲の問題を、主として民衆の見世物興行における行動と倫理の関連について分析した。戦車競争や剣闘士試合に代表される見世物は人々を興奮の坩堝と化し、それらは民衆の注目をひたすら集めるものであった。キケロやセネカのような知識人たちは、これらの見世物を軽蔑したり非難したりしたが、民衆は熱狂したのである。とりわけ、死者を目にすることになる剣闘士試合には、人々の抑圧された欲望が隠されていたと言われ、そのおぞましい欲望の実態はローマ社会を考察する上で重要な要因であることが分かった。興味深いことに、性の禁欲が意識される時代になるにつれ、かえって死体をながめる欲望は目立ってくる傾向がある。性を中心とする欲望の在り方は、古代地中海世界においても、生と死をめぐる人々の意識や行動ににさまざまな影響をおよぼしていることが理解される。 研究代表者大貫隆は紀元4世紀にエジプトを中心とする古代地中海世界の東部地域に発生した初期修道制の展開をたどるために、関連する文献資料(アタナシウス『聖アントニウス伝』、匿名氏『パコミオス伝』、パッラデイウス『ラウソスに献じる修道者伝』、匿名氏『エジプトの修道者伝』、匿名氏『砂漠の師父たちの言葉』他)の本文の再講読と分析を進めた。また年度末(3月2日)に、後藤篤子(法政大学教授)、豊田浩志(上智大学教授)、筒井賢治(東京大学非常勤講師)、高橋通男(慶応大学教授)を講師とするシンポジウムを開催した。
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[Publications] 大貫隆,T.ONHKI: "Tollwut in Q?Ein reveuch reber Mt12,43-51 Lk 11,24-6"New Testament studies (Cambridge). 46. 358-374 (2000)
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[Publications] 本村凌二: "政治家キケロの人心掌握術"『キケロ選集 月報(岩波書店). 11. 9-12 (2000)
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[Publications] 本村凌二: "古代ローマの剣闘士"デューイ・グラム『グラディエーター』ソニーマガジン文庫. 296-301 (2000)
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[Publications] 水谷智洋: "呉茂一著『ギリシア神話』日本語の運人の西洋古典世界への案内"月刊『ぷりいず』. 5月号. 100-101 (2000)
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[Publications] 水谷智洋: "セミの諺-古代ギリシアの場合"『プロピレア』. 12. 1-5 (2000)
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[Publications] 大貫隆(分担執筆): "『光の解読』,坂口ふみ 他 編中分担執筆「ロゴスの受肉ヒソフィアの過失」"岩波書店. 285(165-195) (2000)
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[Publications] 大貫隆(分担執筆): "『世界の神話101』(分担執筆)「創世記の天地創造神話」 他"新書館. 254(34-53) (2000)