2000 Fiscal Year Annual Research Report
キケロにおけるギリシャ哲学の受容と彼の政治行動をめぐって
Project/Area Number |
11610581
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
角田 幸彦 明治大学, 農学部, 教授 (70142544)
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Keywords | ことば / 教説主義 / 懷疑主義 / ストア派 / 修辞学 / ピュロン主義 / 政治哲学 / 感覚 |
Research Abstract |
キケローというローマ最大の哲学者のギリシア哲学の受容と理解と批判を、本年度は特に『アカデミカ』という作品を中心に追考してみた。キケローは実に細やかにかつ平衡感覚をもって当時の哲学学派の中心思想を取り上げ、検討し、それぞれを批判している。キケローの本分はローマ国家に奉仕することにあり、それはローマ共和政というローマの宝を守ることであった。カエサルとポンペイウスとの政争、カエサル暗殺後のアントニウスの台頭、その激動と国家の亀裂の中で、一人気高く国家の基本方向を哲学的に基礎付ける仕事にむかった。その責任と使命の中で、キケローは常にギリシア哲学そしてヘレニズム期の四つの学派の哲学思想を豊かに平明に問い詰め、作品化していった。主として倫理学つまりひとは何を以って善とするか、ひとを包む幸福とはそもそも如何なるものかを考えていったのである。キケローにとって哲学は知ること、知の世界の構造の明確化以上に生きること、ひととしての尊厳と責任に満ちた生き方の吟味を旨とすべきものである。『アカデミカ』はキケローの数すくない知識哲学の書である。この作品は、感覚がどこまで知の権能をもっているか、知へ迫り得るかにつき、ストア派と新アカデメイア派の所説を対比させ、縦横に論じたものである。両学派の主張は、このキケローの作品によって、最も精細な内容で今日迄伝えられている。
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[Publications] 角田幸彦: "プラトンとキケローの政治哲学"明治大学人文科学研究所紀要. 48. 1-14 (2001)
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[Publications] 角田幸彦: "アリストテレス、キケロー、ニーチェ-ことば世界の探求・造形・深化"明治大学教養論集. 342. 113-169 (2001)
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[Publications] 角田幸彦: "キケロー『アカデミカ』の知識哲学について 1-感覚と知-"明治大学教養論集. 345. 1-69 (2001)