2001 Fiscal Year Annual Research Report
「死の迎え方」の規範形成に関する実証的及び法哲学的研究
Project/Area Number |
11620007
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Research Institution | KOBE UNIVERSITY |
Principal Investigator |
山崎 康仕 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (00200668)
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Keywords | 安楽死 / 死の迎え方 / 法と倫理 / 法と道徳 / 医療倫理 / 生命倫理 |
Research Abstract |
1.今年度は研究の最終年度にあたるため、これまでの研究の発表と今後の研究への架橋を目指した。 2.「安楽死」の実態調査のデータを下にして、いくつかの論文を発表した。それらは、浅井篤(京大)・小林志津子(京大)・谷田憲俊(兵庫医科大)・大西基喜(関空検疫所)・Helga Kuhse (Monash Univ.)と共著で発表した。それらの論文によって、特にオーストラリアとの比較によって日本の医療現場での安楽死への態度に関する特質を若干析出した。そこでは、とくに患者の家族に対する医療者側の配慮が重要な要因として働いていることが見いだされた。 また、「安楽死」の実態調査についてのこの研究の一部を、アムステルダム(オランダ)で開催されたIVR(法哲学・社会哲学国際学会連合)世界大会で報告し、参加者から貴重なコメントをいただいた。 3.「安楽死」を正当化しうる理論についての批判的研究に関しては、まず、「安楽死」の実態調査から浮かび上がってきた家族の関与と家族に対する医療者側の配慮を取り込みうる理論構築の必要性が認識された。これは、西欧型の個人主義的な自己決定論の限界を示すものであり、安楽死に関して、「自己決定基底的正当化理論」とは異なる視座に基づく「家族基底的正当化理論」の可能性及び必要性を示唆するものである。他方、この特質は、日本に限らず、東アジア全般に言えることではないかという仮説の下、西欧とは異なる地域の文化的特殊性を考慮する視座の必要性を認識させた。 4.今後、この「家族基底的正当化理論」の地域的偏在性を実証する研究への端緒として韓国の研究者との交流を進め、本学で開催されたシンポジウムで共同研究に着手した。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 山崎 康仕: "人権概念の変容"加茂直樹編『社会哲学を学ぶ人のために』(世界思想社). 53-64 (2001)
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[Publications] Atsushi Asai: "Euthanasia and the Family : An analysis of Japanese doctors' reactions to demands for voluntary euthanasia"Monash Bioethics Review. Vol.20,No.3. 21-37 (2001)
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[Publications] 山崎 康仕: "Voluntary Euthanasia : Comparisons between Japanese Doctors and Australian Doctors about Attitudes and experiences"国際文化学研究(神戸大学国際文化学部). 第16号. 85-100 (2001)
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[Publications] Atsushi Asai: "Doctors' and Nurses' Attitudes Toward and Experiences of Voluntary Euthanasia : survey of members of the Japanese Association of Palliative Medicine"Journal of Medical Ethics. Vol.27,No.5. 324-330 (2001)
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[Publications] 山崎 康仕: "オーストラリアにおける「安楽死」の制度化(1)"国際文化学研究. 第17号(3月印刷予定). (2002)
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[Publications] 山崎 康仕: "生死をめぐる法文化(4月出版予定)"竹下賢・角田猛之編著『マルチ・リーガル・カルチャー・新版』(晃洋書房). (2002)
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[Publications] Noritoshi Tanida: "Voluntary Active Euthanasia and the Nurse : A Comparison of Japan and Australia(5月出版予定)"Nursing Ethics. Vol.9.3. (2002)