1999 Fiscal Year Annual Research Report
我が国における司法消極主義と積極主義-日本型付随的審査制の活性化の可能性-
Project/Area Number |
11620023
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
中谷 実 滋賀大学, 教育学部, 教授 (30024996)
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Keywords | 外国人の人権 / 司法消極主義 / 司法積極主義 / 定住外国人 / 指紋押捺 / 再入国 / 公務就任権 / 在留期間 |
Research Abstract |
本年度は、公刊されている外国人の人権をめぐる全ての判例を、入国規制、登録申請義務、確認申請義務、指紋押捺義務、在留期間更新の許可制、再入国の許可制、社会保障における国籍要件、選挙権における国籍要件、公務就任の制限、出国の規制等に類別しながら、筆者の司法消極主義と積極主義の枠組みで分析した。昭和20年代から50年代前半までは、密入国との関連で入国の自由、密出国との関連で出国の自由、外交関係との関係で再入国の自由、政治活動との関係で在留期間更新等の問題が争われた程度であり、憲法問題処理のテクニックも、消極主義IIに類別される「立法裁量」、「公共の福祉」、「行政裁量」テクニック等にすぎなかった。しかし、50年代後半以降、定住外国人の人権運動とともに、福祉受給、指紋押捺拒否、押捺拒否を理由とする再入国の不許可、在留期間更新の不許可、国政選挙権・被選挙権、地方選挙権に係わる訴訟が多発し、テクニックも、「権利保障なし」、「権利保障なし・立法政策として権利付与可能」、「公共の福祉・立法裁量」、「立法裁量・明白性の原則」、「合理性」、「合理性・立法裁量」、「合理的関連性・合理的裁量」、「比較衡量」テクニック等、消極主義IIのテクニックも種々見られるようになった。しかし、それらは、在日韓国・朝鮮人を中心とする定住外国人と日本国籍をもつ日本国民との相違を強調する思想に基づいており、立法、行政を追認する姿勢をとっている。法律を違憲とする積極主義IIのテクニックは見られないが、違憲を示唆する「立法裁量・違憲の疑い」、「合理的期間論・違憲の疑い」テクニック等の消極主義IIのテクニックが、また、適用レベルで違憲を示唆する積極主義Iのテクニックも見られないわけでない。地球市民主義というのは、現状では時期尚早ではあるとしても、質・量的に、より積極主義のアプローチが高まる方策を司法改革論議の中で考えていきたい。
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