1999 Fiscal Year Annual Research Report
男女平等原理の規範的内容に関するEC法とドイツ憲法の緊張関係に関する研究
Project/Area Number |
11620029
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西原 博史 早稲田大学, 社会科学部, 教授 (10218183)
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Keywords | 平等原則 / 平等権 / 男女平等 / 共同参画 / 比例原則 / 比例性審査 |
Research Abstract |
本研究は、法的に要請された男女平等の規範的な内容を探求する素材として、ドイツ憲法における正義指向モデルが、ドイツ国内で直接に妥当するEC法の権利指向モデルによって修正を迫られる状況を対象とし、それをどう把握するかを考察する。 権利指向モデルを採ることによって、男女を異なって扱う立法を権利制約と捉え、立法目的達成のための必要性を根拠に制約の正当化可能性を裁判上審査することが可能となる。こうした比例性審査は、それまでの正義指向モデルで採られていた比較可能性審査に取って代わることになる。そのことにより、積極的差別解消措置を採用するにあたって、どの程度の侵害強度までが許容されるかを、実現する具体的な立法目的との関係で特定することができるようになる。 その意味で、ドイツにおける権利指向モデルの導入は歴史的に早晩必要であったわけで、一般的平等原則の次元における「新定式」が採用されている今、男女平等の理論に関しても、新しい体系への移行を通じて、平等権全体の体系化が図られる必要がある。 1999年度においては、当初の予定通り、国際学会での中間報告と、それに基づく議論を素材として、上の点に関する2000年度中の成果公表を実現することに向けた、最終的な理論的検討を進めることができた。 7月13日の国際憲法学会第5回世界大会(ロッテルダム)の第7部会では、"Two Models of Equality"と題された中間報告を行った。基本的な構図に対する支持が表明されるとともに、特に積極的差別是正措置の準拠点としての「現在の差別の克服」という目的をさらに洗練させる必要が指摘された。この点を取り込み、2000年度中の研究の完成を射程に入れた、最終的な調整を現在進めている。
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