1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11620038
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
関 武志 新潟大学, 法学部, 教授 (30187835)
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Keywords | 私道 / 所有権 / 妨害排除 / 通行権 |
Research Abstract |
いわゆる建基法において道路として扱われる私道も,その維持・管理の権能はあくまで私道所有者に留保されているため,この所有者が,私道内に通行利用の妨げとなる工作物を設置するなどの行為に出ることが少なくなく,したがって私道所有権と私道の通行利用という通行利益との関係がしばしば裁判上で争われてきている。もっとも,同法44条違反の行為などに対しては,通行人は,特定行政庁を相手に,是正措置命令や禁止・制限措置命令の発動を求め得るのであるが,特定行政庁としては,かかる発動を求められたところで,常にこの求めに応ずることを義務づけられるものではなく,右の発動は特定行政庁の自由裁量の範囲内に属する行為であって,通行人としては単にこうした命令の発動を促すことができるにすぎない。だから,通行人としては,私道所有者を相手に,直截的に,その妨害の排除を求めて通行状態を確保しようとする行動に出ることは容易に予想されよう。こうした問題は,公法・私法の分類が妨げとなって生じていると考えられるため,その法的解釈は,単に妨害排除請求訴訟で示された解釈に着目しただけでは問題の本質を捉えたことにはならない。したがって,建基法上の規制が私道の所有権をどう制約づけることになるのか,ひいては上記の法的規制が通行人に対してどんな法的保護を与えることになろうか,という視点からの考察が当然に求められなければなるまい。こうした考察を踏まえたならば,現下の法秩序にあっては通行人に具体的な権利を認めることが困難であると思われ,だからこそ,例外的に通行人に妨害排除請求を認める必要性があるのではないか,と考えられるのである。
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