2001 Fiscal Year Annual Research Report
契約の適正化に対する不法行為処理の役割と意義に関する研究
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11620040
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
國井 和郎 大阪大学, 大学院・法学研究科, 教授 (70028017)
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Keywords | 不法行為 / 違法性 / 不当性 / 契約責任 / 詐欺的商法 / 投機的取引 / 専門家責任 |
Research Abstract |
(1)本年度は各論的研究として、物的および人的担保権の設定など複雑な法律関係を伴う契約につき、判断能力不充分のため不利益を被る高齢者および精神発達遅滞の法的保護のあり方と、いわゆる商工ローンの根保証など不当な人的担保の設定をめぐり、不法行為処理との関連いかんにつき精力的に研究を展開した。弁護士や企業法務関係者との研究会を通し、不法行為処理の可能性を否定しがたいが、むしろ意思能力論や担保法理の枠組みにおいて契約関係の適正化を図るべきであり、それが現実的である旨を検証し、確認することができた。これにより、咋年度までの不法行為処理の有効性が認められる行為の類型論的接近とは別異の接近視角を得ることができた。すなわち、本年度の考察から、不法行為処理の限界につき一般準則を導出することができれば、不法行為処理の外延を析出しうるからである。なお、前者につき、明治期から今日までの学説展開を丹念に検討した結果、意思能力の生むに関する相対的判断という新しい視点を得たので、この点に関する本格的論文を作成中で、来年度中にその成果を公表する予定である。 (2)本年度は本研究の最終簿に当たるため、これまでの各論的研究を発展させて、処理態様および法律構成を分類・整理する処理モデル類型化の作業を併行させた。完璧と言うにはほど遠いが、目下の到達点を報告書の形で問題提起して、将来の研究に備える。ちなみに、悪徳商法・詐欺的商法の類については「要件論」が主要問題だが、ハイリスク・ハイリターンの金融取引等は説明義務とその周辺原則を問題とすべき類型となり、専門家責任などは注意義務の高度化が要請される、という視角支柱を設定しえた。
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