1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11620058
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉田 美喜夫 立命館大学, 法学部, 教授 (70148386)
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Keywords | 労使関係法 / 国営企業労使関係法 / 労働保護法 / タイ労働法 / 女性労働者の保護 / 最低労働年令 / セクハラ / 解雇手当 |
Research Abstract |
本研究では、タイ労働法の特質を、その基本要素の解明を通じて構造的に明らかにするため、研究対象として、(1)労使関係法、(2)国営企業労使関係法、(3)解雇規制法、(4)労働保護法、(5)雇用保障法、の5つの領域を設定した。本年度は、このうち、(2)と(4)に重点をしぼり、関係法令のタイ語テキストからの翻訳と基礎的分析およびそれらの現地調査での確認を行った。 研究の結果、(2)については、1991年の国営企業労働関係法が国営企業の労働組合および労働運動全体に対して否定的影響を及ぼしたこと、改正案も1991年以前に復帰するという内容ではなく、民間と区別して定の権利の回復を行うものでしかないこと、および、本法の改正が早ければ2000年はじめにも行われる可能性があることが明らかとなった。 (4)については、1998年の新労働保護法について、以下のような特徴が明らかとなった。すなわち、(1)従来の命令形式と違う法律形式の体系的な法典化、(2)労働時間の短縮や不妊手術休暇、研修・訓練休暇の新設、(3)休職への制限、(4)長期勤続の場合の解雇手当や事業所移転の場合の特別解雇手当、休業手当の新設、(5)安全職業衛生労働環境委員会、労働福祉委員会、労働者生計基金の設置、(6)保証金の原則禁止、(7)使用者変更の場合の権利・義務の承継、(8)元請までの使用者責任の承認、(9)最低労働年齢の15歳への引き上げ、(10)女性労働者の保護の強化とセクハラの罰則禁止、(11)賃金委員会規定の本法への取り込み、(12)労働監督官への救済中立権の承認、(13)罰則の強化、などである。しかし、立法後の1997年の経済危機により、本法は、経営の負担となり、使用者からの改正圧力が高まっている。したがって、本法が現実に根付くためには、かなりの時間を要するように思われる。
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Research Products
(2 results)