2000 Fiscal Year Annual Research Report
刑事訴訟における訴訟能力判定基準ならがに判定手続きに関する国際比較研究
Project/Area Number |
11620063
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
指宿 信 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (70211753)
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Keywords | 訴訟能力 / カナダ / 精神異常 |
Research Abstract |
平成12年度は、11年度に引き続いて、訴訟能力基準論にかかわる諸外国の研究論文や図書などの文献資料の収集をおこなった。訴訟能力基準の見直しに取り組んでいるコモンウェルス系諸国のうちからカナダを選び、議論の経緯や新しい基準、立法判例などを調査し、比較法的な検討をおこなった。調査は、2000年8月から9月にかけてトロント大学にて実施し、トロント大学法学部図書館ならびにトロント大学犯罪学研究所資料室にて、資料収集にあたり、また、同大学法学部の専門家にもインタビューをおこなった。 その結果は、以下のようにまとめられる。第一に、カナダと比べて、わが国の刑事手続には訴訟能力の定義規定のみならず、手続規定がまったく欠如していること、第二に、わが国の場合、訴訟無能力(精神異常)と判定された場合の措置が刑事手続法に規定されておらず、精神保健法に委ねられており、司法権の範囲外に被告人が置かれてしまっていること、である。第一の問題の背景として、わが国では訴訟能力概念が判例に依存していること、手続も当該裁判の裁判官の訴訟指揮に依存していること、訴訟能力の基準も判例に依存していて未整備であること、などが比較法的考察により明らかになった。第二の問題は、保安処分とも関係しているので単純ではないが、わが国の場合には、訴訟無能力者に司法的措置はなく単に公判が停止されるだけであって、行政的措置として施設収容がおこなわれていること、被告人の訴訟能力の回復経緯についてはいずれの機関が責任を持っているか法的に不明であるといった事態を生み出していることが明確になった。
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Research Products
(1 results)