2000 Fiscal Year Annual Research Report
国内市場における非競争性の国際的波及効果に関する理論的および実証的研究
Project/Area Number |
11630014
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
出井 文男 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (90093541)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 誠 慶応大学, 経済学部, 教授 (30191175)
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Keywords | 競争政策 / 談合 |
Research Abstract |
日本は諸外国から、国内市場が非競争的であり、それが外国製品の参入を困難にしている、と批判されてきた。このような批判に関して経済理論的な説明は従来なされてこなかったが、本研究の成果であるYano,Makoto and Fumio Dei(2000)"A Trade Model with Vertical Production Chain and Competition Policy in the Downstream Sector"により、国内市場の非競争性が近隣窮乏化政策として働きうることが示された。この論文は以下の点を明らかにしている。 1.小売、建設、銀行・保険という下流部門における日本の競争政策のあり方を検討した。特に小売では大店法に、建設では談合に焦点を当てた。 データから、1990年代初めに大店法が緩和された後に大規模店舗の数は著しく増加しており、逆に小規模店の数は減少していることを確認した。これは大店法が小規模店の数の減少を食い止める働きをしたことを意味する。しかし、大店法によって小規模店間の競争が促進されたのではなく、さまざまな理由から小売部門での競争が抑圧されたことを明らかにした。 建設談合については、1989-1990年の日米構造問題協議で日本政府が談合に対し独禁法を厳格に適用することを約束したため、それ以降に違反とされた建設談合の件数は急増している。 限られた部門で競争促進的政策の効果が感じられるが、日本経済全体としてみれば反競争的な面がまだまだ残っていると結論できる。 2.リカード・モデルを用い上流部門における完全特化を仮定した以前の分析を、ヘクシャー=オリーン・モデルおよび特殊的要素モデルに拡張し、上流部門における不完全特化を考慮できるようにした。それによって、国内市場の非競争性が近隣窮乏化政策として働く場合の条件をより注意深く検討できるようになった。
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