2002 Fiscal Year Annual Research Report
ニューディール経済改革思想の学説史的研究――コモンズ、タグウェル、ハンセンを中心に
Project/Area Number |
11630015
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高 哲男 九州大学, 経済学研究院, 教授 (90106790)
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Keywords | ニューディール / 法と制度の経済学 / J.R.コモンズ / A.H.ハンセン / プログレッシヴ / J.M.ケインズ / 新自由主義 / アメリカ経済思想 |
Research Abstract |
本年度は研究の最終年度であり、一次資料の解読を進めながら二次文献の調査・収集作業を継続しつつ、成果の一部を学会で発表したり、論文にまとめたりした。 もっとも力を注いだのは、マイクロフィルム化されたコモンズ・ペーパー(立教大学図書館所蔵)の調査であるが、これによって内外の通説に対するきわめて有力な反論の証拠を発見することが出来た。すなわち、アメリカでのケインズ革命の指導者であった「A.H.ハンセンが新古典派からケインズ主義へ転換したのは37年のハーヴァード大学移籍後である」という従来の解釈は、彼がJ.R.コモンズの自宅で開催されていたセミナーの一員であり、既に早くから新自由主義的な思想・理論の持ち主であったことを示す「手紙」の発見によって根拠を喪失した。これによって、20年代や30年代前半に書かれた彼の景気変動論や社会保障制度論と後の「ケインズ的金融・財政」政策論とを整合的に解釈しなければならない具体的な根拠が明らかになったので、現在その作業を進めつつある。さらに、ケインズがコモンズの思想や理論に深い共感を示していたという事実も手紙から分かってきており、この点についても、さらに詳しい追跡調査を続けている。 なお、研究成果の一部は経済学史学会第66回大会(平14.10.26.)で「J.R.コモンズの制度経済学」として報告され、政策評価研究会編『政策分析2002--90年代の軌跡と今後の展望』 九州大学出版会(平14.12.27)所収の「経済学と公共目的--J.R.コモンズにおける法と制度の経済学」(235-255頁)のなかで発表された。 さらに、以上の成果によって従来の研究を補足しつつ、『現代アメリカ経済思想の起源』という著書を執筆中であり、2003年度中には名古屋大学出版会から発行する予定になっている。
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Research Products
(1 results)