Research Abstract |
本年度行った研究の内容は次の3つに分けられる。 (1)1995年環境分析用産業連関表を用いた環境家計簿分析 (2)家庭用エネルギー需要の分析 (3)東アジア地域の経済と環境の相互依存関係に関する分析 (1)ではまず,1995年の日本のCO_2排出量13億トンのうち48.5%が家計の消費活動から誘発されることがわかった。その上で国民1人あたりがどの消費項目から多くのCO_2を誘発しているかを見ると,食費,光熱費,交通費からのCO_2誘発の大きいことがわかった。ここでの計算では家計が衣服を買ったとき,その衣服を生産する過程,流通させる過程で発生するCO_2排出量がすべて計算されている。さらにいろいろな消費財1万円あたりが誘発するCO_2排出量を点数化した「CO_2排出点数表」を作成したが,それによると家庭がよく使う日用品なかには,1万円当たりCO_2排出量の大変大きいもののあることがわかった。さらに「CO_2排出点数表」を家計調査データにリンクすることで,所得階層,世帯主年齢などの属性別に代表家計の「環境家計簿」作成を試みたが,家計属性の違いに応じてCO_2排出構造に顕著な違いの見られることがわかった。 家計から排出されるCO_2の中でも特に大きいのは光熱エネルギーに起因するものであるため,(2)では家庭用エネルギー需要構造について詳しく分析した。まず,家庭のエネルギー需要に関する基礎データにはどのようなものがあり,各データにはどのような性質の違いが見られるかを検討した。その上でいろいろな家計属性別にエネルギー消費構造の違いを分析した。この研究は,将来予定している家庭用省エネ技術普及の環境影響に関する研究の足がかりである。 次に(3)では1990年の東アジア9ヶ国(日本,韓国,中国,マレーシア,シンガポール,タイ,インドネシア,フィリピン,台湾)について,これまで「環境・エネルギー問題分析用産業連関表:略称EDEN」を整備してきたが,その結果を用いた分析を行った。まず,各国各産業別にエネルギー消費構造の特徴を洗い出すとともに,通常の産業連関分析の手法を応用することで,経済と環境の相互依存関係に関する観測事実を比較分析した。次にEDENデータをアジア経済研究所のアジア地域国際産業連関表,および国土交通省の海上輸送データなどとリンクさせ,たとえば日本人の最終消費活動が東アジア地域の生産活動,貿易活動を通じて,直接間接にどれだけのCO_2排出を引き起こしているかなどを分析した。
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