2000 Fiscal Year Annual Research Report
APEC地域の貿易・直接投資自由化と構造・雇用調整-CGEモデル分析-
Project/Area Number |
11630041
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Research Institution | KOBE UNIVERSITY |
Principal Investigator |
利 博友 神戸大学, 経済経営研究所, 助教授 (40283460)
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Keywords | APEC / 貿易自由化 / 直接投資 / CGEモデル |
Research Abstract |
本年度は、世界直接投資マトリックスの推計、貿易データの整合化、及びAPEC域内貿易・直接投資自由化のインパクトについて計算可能な一般均衡(CGE)分析を行った。 まず、海外直接投資のデータを、投資国、受け入れ国、産業別に収集し、18地域、3部門の世界資本ストック・マトリックスを推計した。次にモデルの整合性を維持するため、輸出企業の国籍データを推計し、貿易データを、輸出国、輸入国、品目別の3次元のものから、輸出企業の国籍を加えた4次元のものを推計した。最後にこれらのデータに基づき直接投資を内生化したモデルを構築したが、18地域モデルでは解が収束されなかったため、6地域、3部門のCGEモデルで貿易・直接投資自由化のシミュレーションを試みたところ、解を得ることができた。 CGE分析の結果は次のとおりである。貿易自由化は、APEC諸国の実質GDPを0.2〜2.5%上昇させるが、日本を除いたAPEC地域では、貿易自由化よりも直接投資自由化の方が実質GDPに対してのインパクトが大きい。投資自由化は、特にアセアン諸国の製造業の生産および雇用を増大させる。また、製造業においては、APEC地域の貿易と直接投資には補完性があるということが実証された。この論文は、神戸大学経済経営研究所Discussion Paper Series No.119にまとめたが、主な結果は、2000年11月にシンガポールで開催された東アジア経済学会で報告した。 このプロジェクトに関連して、「日本の構造改革と東アジア経済への波及効果」、および「日本・シンガポール自由貿易協定の一般均衡論的評価」と題する論文もまとめた。前者は、2000年6月にメルボルンで開催されたグローバル経済分析国際会議で、後者は、2001年2月に神戸大学で開催された国際会議『アジア太平洋地域における貿易・金融システム』でそれぞれ報告した。
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