1999 Fiscal Year Annual Research Report
開発・市場移行論における新自由主義へのオルターナティブの研究-公共性概念の復権
Project/Area Number |
11630051
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
矢野 修一 高崎経済大学, 経済学部, 助教授 (10239824)
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Keywords | 越境 / Exit / Voice / 非市場的要因 / 水平的・対話的構造 / 公共性 / 開発独裁 / 民主主義 |
Research Abstract |
ポスト冷戦における開発・市場移行という世界的課題に対する新自由主義的アプローチの限界を探ることを目的とする本研究であるが、今年度は、以下のような点を明らかにした。 (1)ハーシュマンの学問的営為の背景 ハーシュマンの議論は、本研究の大きな柱の一つであるが、まずは彼の学問的営みの背景を、波欄万丈の半生と絡めつつ論じた。市場原理主義に与しない一方で、「国家主導のものではない公的活動」を正当に評価しようという彼の議論には、営々と築き上げられた文明がもろくも崩れ去るなか、翻弄された彼の半生が投影されている。 (2)「Exit-Voice」論の再評価 1970年に提起されて以来、様々な分野に影響を与え議論を呼んできたハーシュマンの「Exit-Voice」論を「公共性概念の復権」という観点から再検討した。「選択の自由」を標傍し、ホモエコノミクスという前提のもと、フリーライダー論を展開する新自由主義は、公共活動、集合的行為の特殊性、非合理性を主張するが、「Exit-Voice」論を展開したハーシュマンによれば、公的世界は当然存在しうるし、また存在すべきということは、主体的選択の側面からも明らかである。 (3)日本的アプローチに内包される権威主義体制容認論の危険性 普遍的な市場モデルをあらゆる地域に適用しようというIMFや世銀に対して、日本は独自の開発協力論を展開しようとしており、新自由主義批判として重要な論点も数多く提起されている。ただ、いまだに新自由主義批判が国家主義へと傾斜する傾向も否めない。公共性の復権が国家主義の主張ではあり得ないことをあらためて確認した。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 矢野修一: "「可能性追求」と「越境」の日々-亡命知識人ハーシュマンの回想"高崎経済大学論集. 42巻・1号. 83-99 (1999)
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[Publications] 矢野修一: "「Exit-Voice」論と公共性(上)"高崎経済大学論集. 42巻・2号. 43-58 (1999)
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[Publications] 矢野修一: "「Exit-Voice」論と公共性(下)"高崎経済大学論集. 42巻・3号. 1-22 (1999)
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[Publications] 高崎経済大学附属産業研究所: "「現代アジア」のダイナミズムと日本(第5章執筆分担)"日本経済評論社. 361 (2000)