2000 Fiscal Year Annual Research Report
技術開発型中小企業の基幹技術と競争優位の源泉-エッセンシャル・ファシリティ観から
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11630053
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
明石 芳彦 大阪市立大学, 経済研究所, 教授 (00150970)
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Keywords | ベンチャー企業 / 技術開発 / 競争優位 / 特許 / ノウハウ / 研究開発 / 中小企業 |
Research Abstract |
(1)日本のベンチャー企業・店頭公開企業と上場企業について、特許と研究・技術開発の行動を実証的に分析した。その結果、ベンチャー企業の研究・技術開発活動は、企業規模とは無関係である点で上場企業とは異なること、実用新案は小規模企業にも有効な権利獲得手段であること、ベンチャー企業は知的財産権獲得指向が強いほどIPO前後の成長が高く、また売上高なども大きいこと、ベンチャー企業の研究開発活動は製品改良などを経て、特許と無関係に収益率を高めているかもしれないことが示唆された。(2)高市場シェアを有する中堅・中小企業(元ベンチャー企業を含む)について、売上高でみた事業規模と特許等の増加形態を検討した結果、中堅企業では、特許等が売上高の拡大とほぼ同じ割合で増加するのに対して、小企業では、売上高の拡大する割合のほぼ半分の割合でしか特許等の増加していなかった。ただし、従業員一人当たり特許保有件数が、各企業の高市場シェアに貢献しているとは認められなかった。(3)財務データとアンケート調査結果の両方を用いて、日本の店頭公開企業における研究技術開発、「中核資産」、経済的業績などとの相互関係を日本で初めて本格的に分析した。成長性が高いのはサービス部門企業だが、日本の店頭公開企業の経済的業績は上場企業と比較しても遜色ない。店頭公開企業は新製品開発を重視している企業が多く、それが収益性の上昇に寄与している。「中核資産」は組織固有のノウハウとか流通チャネルなどと自覚されていたが、それらは収益性や成長性を高めているとは認められなかった。(4)中小企業が保有する生産技術のうち、新製品の場合、中核部分は特許を取得して法的に防御しているが、製法や素材などの場合、ノウハウや企業機密の形で「強み」を維持している側面がある。しかし、それらは顧客要求の充足など他の要因と相まって相対的に高い市場シェアの裏付けになっていると思われる。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 明石芳彦: "日本企業の生産技術とモノづくり"モノづくりと日本産業の未来. 133-157 (2000)
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[Publications] 明石芳彦: "R&D and Patenting Activity of New Ventures in Japan"大阪市立大学経済研究所 Working Paper 0002. 0002. 1-27 (2000)
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[Publications] 明石芳彦,安田英士: "R&D Activity, "Core Assets", and Operating Performances of JA sDAQ companies"Osaka City University Economic Review. 36・2. 77-99 (2001)
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[Publications] 明石芳彦: "ベンチャー企業の経営戦略と特許"特許制度が経済に及ぼす影響に関する調査報告書. 169-181 (2001)