2000 Fiscal Year Annual Research Report
在宅の高齢障害者に対するホームヘルプ労働についての研究
Project/Area Number |
11630064
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
佐藤 卓利 立命館大学, 経済学部, 教授 (60178746)
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Keywords | ホームヘルプ労働 / ホームヘルパー / 介護保険 / 在宅ケア / 身体介護 / 家事援助 / 相談・助言 / 生活支援 |
Research Abstract |
介護保険は、ホームヘルパーが行うサービスについて、身体介護を医療サービスとしての看護とは区別し、それに比べて一段と低く評価する。また家事援助については主婦の家事労働の延長としてその専門性を評価せず、相談・助言についてはその独自の意義を認めない。ホームヘルプ労働は、身体介護、家事援助、相談・助言を包括した総合的な生活支援労働であるとの仮説を、ヘルパー自身の経験にもとづいて語られた事例報告によって裏付けた。1997年7月から2000年7月までの3年間にわたる一人暮らし高齢者Mさんへのホームヘルパーの働きかけを衣・食・住・体と心の健康・社会関係・家族関係の6つの側面から整理した。 Mさんへの3年間にわたるヘルパーの働きかけは、その過程において確かにMさんの生きる意欲を高め、生活の改善をもたらした。しかし、Mさんは心筋梗塞の発作以来、再び元の状態へと後退したかのようである。現在は入院中であり、在宅復帰の見通しは立っていない。だが、このことをしてヘルパーの3年間の労働を無意味であるとは言えない。 その労働の目的は、生活上の障害を持った人が、在宅で人間らしい生活を続けられるよう支援することである。しかしその目的が、対象者の状況の変化によって達成されないことが、多々ありうる。目的の達成=一つの固まった成果、を労働の評価とする近代社会の価値基準とは異なる評価基準が求められているように思われる。それは、対象者の満足度という主観的基準とも異なる、社会的な、客観的な基準でなければならない。なぜならそれは、ホームヘルパーの報酬=賃金の水準と関わるからである。 人間の生きる過程=生活の継続そのものの評価と深く結びついた、生活支援労働としてのホームヘルプ労働の社会的評価が求められている。
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