1999 Fiscal Year Annual Research Report
民国期の栄家企業集団(製粉・紡績業)についての総合的研究
Project/Area Number |
11630075
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中井 英基 筑波大学, 歴史・人類学系, 教授 (70068758)
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Keywords | 栄家企業集団 / 商人企業家 / 製粉業 / 合股(合夥) / 栄徳生 / 栄宗敬 / 保興製粉工場 |
Research Abstract |
本研究の課題は「民国期の栄家企業集団(製粉・紡織業)についての総合的研究」という。栄家企業集団とは,江蘇省無錫の栄宗敬・徳生兄弟が清末に創設し,民国期に発展させた製粉と紡織の茂新・福新・申新の三系列計21社のことであり,当時最大かつ代表的な企業集団といわれた。本研究は,三カ年計画に基づいて順次この企業集団と栄家企業家を分析しつつ,旧中国の経済・経営上の重要問題を検討し,現代の中国経済に対する含意を探り出すことを意図している。 初年度(平成11年度)の研究重点と得られた成果は,以下の通りである。(a)初年度は夏に中国で栄家企業を研究している唯一の研究機関・上海社会科学院経済研究所を訪問し,史料調査と研究交流を実施する予定であったが,諸般の事情で訪問を年度末に延期し,代わりに夏以来数度の書簡を往復させ,重要史料や問題点の問い合わせと確認を行った。(b)その作業に基づき、「清末中国における栄徳生と保興製粉工場の設立」と題する研究論文を執筆し,以下の成果と新知見を得た。(1)栄家兄弟の所属する宗族「梁渓栄氏」の明初以来の定住と発展の経過と,一族の経済活動など全体像を解明,(2)栄家兄弟の祖父・父などの家系,家庭環境,兄弟の生い立ちと銭荘業の修業等の過程を検討,(3)兄弟最初の事業である保興製粉工場の設立について,その計画の立案,有力株主の組織化,資金募集,工場建設・機械の設置,工場建設反対運動への対策と官庁との交渉の経過を分析,(4)工場操業開始後の経営状況と問題点の指摘,(5)以上の保興製粉工場設立過程における主導権は兄ではなく弟の栄徳生にあったことの確認,などである。以上の考察によって栄家企業研究の出発点が与えられた。来年度の計画はこれらの成果の上に継続される。
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