2000 Fiscal Year Annual Research Report
戦後西ドイツ資本主義における経済政策の選択肢-その起源と展開
Project/Area Number |
11630077
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
雨宮 昭彦 千葉大学, 法経学部, 教授 (60202701)
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Keywords | 供給指向的・需要指向的政策 / 戦後社会契約の危機 / 産業立地間競争 / 目標相場圏構想 / トービン税 / ナチズムの中間層テーゼ / 後知恵の決定論 / 歴史における客観的可能性の問題 |
Research Abstract |
戦後西ドイツ資本主義経済のダイナミズムを根底において支えてきた基本的な、相互に対抗する二つの選択肢、すなわち供給指向的な政策と需要指向的な政策の生成と展開に関する本研究テーマに関わって、本年度は、第一に、戦後から現代への経済政策の展開に関し次の諸点を明らかにした。 (1)1980年代以降における戦後経済システムの危機と戦後社会契約の危機。ここでは、クオリティーマーケットにおけるドイツ企業の比較優位の喪失、ドイツ再統一のショック、並びにグローバリゼーションの衝撃が論点となった。 (2)90年代末の連邦議会選挙における、一方での産業立地間競争政策としての「供給指向的」経済政策と他方での「需要指向的」経済政策の選択肢の登場。 (3)後者の選択肢が、経済統合やグローバリゼーションの進行のなかでとるに至った革新的な形態をラフォンテーヌ蔵相の政策構想に即して検証した。ここでは、社会民主主義の政策アジェンダ、国際通貨・金融政策の課題としての目標相場圏構想とトービン税が主要論点となった。 第二に、選択肢の歴史的起源に関わって次の諸点を明らかにした。 (1)第一次大戦前後における新中間層の動向と政策論争を、産業政策、景気政策の側面からだけでなく、貿易政策の観点からも分析し、いわゆる「ナチズムの中間層テーゼ」の新たな解釈を提示しえた。 (2)政策の選択肢の観点が、歴史研究における「後知恵の決定論」を回避し、「歴史における客観的可能性の問題」の解決とって極めて示唆的であることを示した。
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