1999 Fiscal Year Annual Research Report
占領期北海道中小炭鉱における組夫制度一茅沼炭鉱の事例
Project/Area Number |
11630087
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
東條 由紀彦 明治大学, 経営学部, 教授 (20172124)
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Keywords | 組夫(くみふ) / 炭鉱夫 / 占領期 / 従業員(組合) / 企業別組合 |
Research Abstract |
本研究は、終戦直後少なくとも110名の餓死・栄養失調死亡者を出すなど、非常にきびしい環境下にありながら、当時の経営者からも「差別待遇撤廃」をメインスローガンの一つにかかげる労働組合からも全く無視された北海道茅沼炭鉱における組夫(請負炭鉱労働者)制度を対象として行われた。とくに焦点をあてたのは、1)かかる組夫制度の実態の解明 2)それに無関心でありつづけた労使の態度の存在理由 3)かかる組夫制度と後の時期の社外工制度とのかかわり 等である。 以上の点の検討のため、1)北海道立開拓記念館所蔵の旧茅沼炭鉱経営文書 2)北海道泊村役場文書等の文書類の収集・分析と、1)当時の炭鉱勤労課係員 2)当時の組合幹部等を対象とした多類のききとり調査を主に現地を中心に行った。 以上の結果、当時の組夫組織についての事実関係はほぼ掌握すると共に、経営者・労働者双方の上にたつ「生産の主体」に共に内属することによって成立した日本の(「労働者」とは区別される)「従業員」と、それに基づき形成されたいわゆる「企業別組合」とが「生産の主体」の言わば対極に位置するパリア(賤民)層としての「組夫」をその内属から排除することを通じて、それとの関係で自己を定立した事情が、ほぼ明らかになったと思われる。 ただし本年度の研究では、かかる「組夫」と後の「社外工」との関連等については、いまだ十分な調査検討が行われたとは言えず、来年度以降の課題として残された。 尚本年度までの研究上の論点を中心として、未だ全体を論じたものとはなっていないが論稿が明治大学社会科学研究所紀要に投稿中であり、来年度中には刊行されるはずである。
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