1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11630094
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大竹 文雄 大阪大学, 社会経済研究所, 助教授 (50176913)
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Keywords | 整理解雇 / 失職 / 判例法 / 解雇権濫用法理 |
Research Abstract |
日本では、制定法上は「解雇自由」の原則が維持されており、使用者は正当事由がなくとも労働者を解雇することができる。しかしながら、現在では「使用者の解雇権行使が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当して是認しえない場合には、権利の濫用として無効となる」という判例法理が多くの裁判例によって確立されている。この判例法理が、解雇権濫用法理と呼ばれているものである。 本年における研究は、次の点について分析を行った。第一に、日本の整理解雇に関する解雇権濫用法理について、その形成と運用を判例に基づいて、数量的に明らかにした。第二に、日本の雇用調整に関する実体を数量的に明らかにし、その際に法的枠組みとの関連を議論した。 第一の点にはついては、つぎのような結論が得られた。戦後の整理解雇に関する判例法理が確定してきたのは、1960年代半ば以降である。この時期に、整理解雇の判決における原告勝訴率は約50%になった。原告勝訴率が50%であるという事実は、判例が安定し判決が予測可能な事件は、和解で終結するということを意味している。1960年代後半から、雇用調整の際の公共職安への届出制が始められたこと、70年代半ばには雇用調整助成金制度が作られたこと等も影響を与えている可能性がある。しかし、1990年代後半になって、労働側の勝訴率が急上昇した。これは、判例法理の適用が中小企業にまで広められたことが大きい。 第二の点については、日本では失職しやすいのは、中高年労働者であるという一般に知られた事実を計量的に分析で確認した。また、勤続年数が短い労働者も失職の確率が高いということを発見した。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 大竹文雄: "高失業率時代における雇用政策"日本労働研究雑誌. Vol.41 No.5. 14-26 (1999)
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[Publications] 大竹文雄: "高齢化と所得分配の不平等"日本経済研究センター会報. No.825. 17-20 (1999)
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[Publications] 大竹文雄,斉藤誠: "所得不平等化の背景とその政策的含意:年齢階層内効果、年齢階層間効果、人口高齢化効果"季刊社会保障研究. 第35巻第1号. 65-76 (1999)
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[Publications] 大竹文雄: "労働法制"Intellectual Cabinet. No.11. 4-5 (1999)
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[Publications] 大竹文雄: "雇用不安解消のためのシステム整備"エコノミックス. 第1号. 39-49 (1999)
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[Publications] 大竹文雄: "世代間アンバランスの是正を"Intellectual Cabinet. No.24. 6-7 (1999)
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[Publications] 岩本康志,大竹文雄,斉藤誠,二神孝一: "経済政策とマクロ経済学-改革への新しい提言"日本経済新聞社. 252 (1999)