2001 Fiscal Year Annual Research Report
情報の非対称性のもとでの中央政府補助金システムに関する研究
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11630098
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Research Institution | NAGOYA GAKUIN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
水田 健一 名古屋学院大学, 経済学部, 教授 (00157497)
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Keywords | 中央政府補助金 / 定率補助金 / 情報の非対称性 / 誘因合理性 / シグナリング・ゲーム / 分離均衡 / 一括均衡 / 直観的規律 |
Research Abstract |
前年度に分析した、当該公共サービスに関する地方政府の選好に関して、中央政府が不完全な情報しか持たない場合において、地方政府が自発的に正直な選好表明を行うような誘因合理的な2段階の定率補助金メカニズムに関するモデルに改良を加え、中央政府による補助金費用最小化行動のより厳密な定式化を行った。これに加えて、地方政府の効率性タイプについての情報の非対称性の元での、地方政府対中央政府間の補助金交付を巡るシグナリング・モデルによる分析を行った。すなわち、地方政府が公共サービス供給の効率性に関して2つのタイプ(高生産性タイプ(タイプh)対低生産性タイプ(タイプl))に属し、個々の地方政府がいずれの効率性タイプに属するのかについて、地方政府は完全な情報を持っているが、中央政府はその情報を持たないという意味での非対称性が存在する場合についてのシグナリング・ゲーム・モデルを適用した分析を行った。ここでは次のようなゲームを想定した。1単位の公共サービスの供給に関して、地方政府は定率補助金の補助率と定額補助金額からなるスケジュールを中央政府に対してオファーし、中央政府は地方政府からの補助金計画のオファーを受け入れるか却下するかを選択するものとする。このシグナリング・ゲームには、それぞれのタイプの地方政府が異なった補助計画のオファーを選択する分離均衡と同一の補助計画を選択する一括均衡が存在するが、直感的規準を満足する均衡は、以下のような性質をもつユニークな分離均衡のみであることを明らかにした。この分離均衡では、2つのタイプの地方政府が受け取る定率補助金と定額補助金の和は、中央政府にとっての地方公共支出の限界便益に等しい。タイプlの地方政府は100パーセントの補助率での定率補助金を選択する。タイプhの地方政府は誘因両立性制約をちょうど等号で満足するだけの十分に低い補助率での定率補助金を選択する。
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