2001 Fiscal Year Annual Research Report
3次多項式写像の力学系の研究(パラメータ空間の位相的構造について)
Project/Area Number |
11640218
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Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
中根 静男 東京工芸大学, 工学部, 助教授 (50172359)
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Keywords | stretching ray / Boettcher vector / parabolic implosion analysis / porous / Fatou vector |
Research Abstract |
実3次多項式写像族のstretching raysの到達性について、これまで研究してきた。Parabolic locus Per_1(1)の上方の領域内のstretching raysはPer_1(1)のどこかに集積すること、Boettcher vectorが整数の場合はcritical orbit relationがあるので到達することはすぐわかる。Boettcher vectorが無理数の場合はparabolic implosion analysisを用いることにより、到達しない、つまりstretching raysが激しく振動して集積点集合が1点集合にならないことは証明できていた。しかし、有理数であるが整数でない場合には未解決であった。今年度、共同研究者で、Warwick大学に滞在中の大阪市立大学の小森洋平氏を訪ね、そこで議論した結果、この場合も到達しないことを証明することができた。証明にはJulia集合がparabolic fixed pointでカスプになることと、カスプで,のくさび状の領域はporousにはなり得ないことを用いる。以上の結果をそれ以前の結果と合わせて、論文"Landing property of stretching rays for real cubic polynomials"として書き上げ、雑誌"Ergodic Theory and Dynamical Systems"に投稿することができた。Warwick大学への出張には科研費の外国旅費を使わせていただいた。科研費のおかげで課題を解決することができたことを心から感謝する。 これで第1象限については完全に解決した。第3象限においても基本的には同様の議論が可能だが、Boettcher vectorが1/2の場合だけは上の議論が使えない。実際、実biquadratic mapsの族に対しても同様の問題が考えられるが、この場合にはBoettcher vectorが1/2であっても到達することがありうるのである。この場合は更に深い解析が必要になると思われるが、まだ解決していない。今後の課題である。 更に複素パラメータ空間で考えるというのも今後の課題である。この場合には、stretching raysがある性質を満たす点に集積するならその点のFatou vectorは実数になると予想されている。これに関して、到達すれば実数になることは、もうひとつ仮定をした上で示すことができた。しかし、これは上の予想には程遠い、端緒的な結果でしかない。
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