2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11640261
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡 眞 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (60144606)
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Keywords | バリオン / カイラル対称性 / 強い相互作用 / QCD / クォーク模型 / 格子QCD / ハイパー核 / 弱い相互作用 |
Research Abstract |
カイラル対称性に基づくバリオンとその励起状態の分類とそれらの性質への反映を調べることがこの研究の中心テーマであるが、それから派生してカイラル対称性に支配されるハドロンの核内での諸性質の研究に発展してきた。今年度は、ハイペロンの核内での弱崩壊における2バリオン過程、バイオンの諸性質のバリオン密度依存性、クォーク・グルーオン混合凝縮の格子QCDによる評価と温度依存性などの研究を中心に行った。主な成果を以下にまとめる。(1)ハイペロンの弱崩壊が核内で起るハイパー核の崩壊は弱相互作用に対する強い相互作用による補正がどのようなスケールで起こるかを探り、その機構を解明するのに役立つ重要な物理量を提供する。ここでは、これまでの単一ラムダ核の非中間子崩壊での実験と理論の合致をもとに、ラムダ間弱相互作用によるダブルハイパー核の崩壊を詳細に研究し、崩壊幅、崩壊比を予言した。(2)パイオン弱崩壊定数の核内でのバリオン密度依存性を、QCD和則の方法を用いて調べ、空間成分の軸性ベクトル流に対応する崩壊定数が核物質の密度に強く依存して減少することを示した。一方、時間成分に対応する崩壊定数はGMOR関係式に従い、クォーク凝縮の値の平方根に比例して緩やかに減少する。後者は、パイオンの原子核深束縛状態のエネルギーシフトの解析から予想されている変化にほぼ対応している。(3)クォークとグルーオンの混合凝縮は次元5を持つ、カイラル対称性を破る凝縮で、QCD和則の解析から、次元3のクォーク凝縮と同じオーダーの大きな値を持つと予想されてきた。この混合凝縮を格子QCDを用いて計算し、クォーク凝縮との比や、温度依存性を調べた。クェンチ近似による計算の結果、混合凝縮は予想された通り、非常に大きいこと、クォーク質量依存性がそれほど強くないこと、低い温度ではほぼ一定の値で相転移温度近傍で大きく変化しカイラル相転移を示すことが明らかになった。
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