1999 Fiscal Year Annual Research Report
水と液体のTHz領域の緩和と振動に対する新しい視点
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11640310
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
冨永 靖徳 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化研究科, 教授 (00013540)
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Keywords | 水 / アルコール / 緩和モード / THz領域 / 重水 / HDO / 分子間振動 / 分子内振動 |
Research Abstract |
1)水、重水、および、その混合系について、分子間振動の現れる低振動数領域のラマンスペクトルと、分子内振動が現れる高振動数領域のスペクトルについて検討した。特に混合系について、低振動数領域でのスペクトルの濃度変化を系統的に解析した。また、高振動数領域については、水/重水のモル比1:1であるHDOの分子振動について解析した。この結果、THz領域の緩和に関して、水、重水、混合系では、緩和時間にわずかな差が現れる以外、大きな差がない事がわかった。また、HDOの高振動数領域の分子内振動に対しては、水素結合でつながった四面体的構造が、C_1対称性まで低下しているとしたときの基準振動を考えると、ラマンスペクトルのパターンがよく説明される事がわかった。 2)最近、エタノール水溶液系の40cm^<-1>から400cm^<-1>までの低振動数ラマンスペクトルが、純水と純エタノールの和スペクトルで再現されるという結果を基に、水とエタノールは、分子レベルでは完全には混ざっていないかもしれないと言う報告がなされた。この報告に触発され、我々のところで得られている、2cm^<-1>までの低振動数ラマンスペクトルの解析をやり直した。その結果、振動モードが主体の40cm^<-1>以上の領域では、すべての濃度で、和スペクトルで再現されたが、緩和モードが主体の40cm^<-1>以下の領域では、実測スペクトル和スペクトルの間で系統的なずれがあることが明らかになった。このずれの積分強度の濃度依存性は、水のモル分率0.6から0.8の間で極大を持つ。また、0.5cm^<-1>以下の領域で、レーリー散乱の成分とブリュアン散乱の成分の強度比、(Landau-Placzek比)を濃度に対してプロットすると、水のモル分率0.8付近で鋭い極大を示すことが明らかになった。今後、これらの結果を整合性よく説明するピクチャーを構築していきたい。
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Research Products
(1 results)