1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11640314
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
金崎 順一 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (80204535)
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Keywords | 化合物半導体 / インジウムリン / 光誘起構造変化 / トンネル顕微鏡 / レーザー / 電子励起効果 / 表面 |
Research Abstract |
代表的III-V族化合物半導体であるInPの(110)劈開表面に、表面バンド間遷移に共鳴した460nmのナノ秒レーザーを照射し、光励起前後の微視的構造変化をトンネル顕微鏡により観察した。その結果、(1)表面最外層のP副格子に選択的に(2)電子的結合切断により、(3)vacancyが発生することが判明した。光生成キャリアのダイナミクスの違いが電子的結合切断に及ぼす効果を明らかにするため、n-type及びp-typeのInP 試料において照射後に誘起される構造変化を比較検討した。p-type試料では生成されるvacancyの90パーセント程度は孤立vacancyであるのに対し、n-type試料では[110]方位に伸びたvacancy stringsが効率的に成長していく。また、繰り返し照射に対して、p-typeでは一定の効率でvacancyが生成されるのに対して、n-typeでは生成効率が大きく減衰することが明らかとなった。照射初期における生成効率は、いずれの表面についても励起強度に対して非線形な増大を示し、生成効率はn-type試料のほうが数倍高い。励起強度依存性の結果を詳細に解析したところ、観測された非線形性の振る舞いは2正孔局在モデルにより良く説明できることが分かった。 Pサイトで選択的に結合切断が発生する事、励起による表面正孔濃度が低いと予想されるp-type結晶表面において結合切断効率が小さい事から、結合切断に正孔が関与している可能性が高い。また、実験結果とと2正孔局在モデルとのよい一致は、結合切断に2正孔の局在が重要な役割を果たしていることを強く示唆している。n-type試料でのvacancy strings成長及びvacancy生成効率の減衰は、In-Pチェーンに一次元的に広がった表面正孔の状態がチェーン上のvacancy隣接サイトに効率的に局在するためと考えられる。トーパントタイプによるvacancy形態の違いは、両試料表面におけるP-vacancy電荷状態の違いがvacancy隣接サイトへの表面正孔の局在効率に影響を及ぼしているためと考えられる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] N.Itoh: "Laser-Induced Desorpion from STM-Selected Semiconductor Sites"Progress in Surface Science. 61・1. 1-19 (1999)
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[Publications] 金さき順一: "半動体表面構造の光誘起変化と原子の脱離"固体物理. 34巻・8号. 657-668 (1999)
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[Publications] K.Tanimura: "Laser-Induced Electronic Bond Breaking and Structural Changes on Semiconductor Surfaces"Laser Applications in Microelectronic and Optoelectronic Manufacturing IV,Society of Photo-Optical Instrumentation Engineers(SPIE). 3618. 26-36 (1999)