1999 Fiscal Year Annual Research Report
トレリス格子混合原子価バナジウム酸化物の特異な電子状態に関する理論的研究
Project/Area Number |
11640335
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
太田 幸則 千葉大学, 理学部, 助教授 (70168954)
|
Keywords | 強相関電子系 / 電荷秩序 / スピンギャップ / バナジウム酸化物 / t-J模型 / トレリス格子 / NaV_2O_5 / 混合原子化酸化物 |
Research Abstract |
トレリス格子構造を持つ混合原子価バナジウム酸化物であるα'相バナジウムブロンズα'-NaV_2O_5およびその関連物質の、電荷の自由度が示す特異な振る舞いとスピンギャップ発現の機構解明を目指して、クオータ・フィリングの結合した異方的t-J梯子模型が示す電子状態を、理論的および計算物理学的手法を用いて研究した。特に、この物質の光学伝導度スペクトルの計算を詳細に行い、実験事実と比較した結果、この系では電荷秩序化の相転移温度以上でも大きな電荷のゆらぎがあることを明らかにした。さらに、このスペクトルヘのNaの欠損に対する効果を明らかにし、この系が極めて大きな量子ゆらぎを持つ系であることを示した。またこの系の電子状態を、低次元有機導体の電荷秩序を含む特異な電子系と比較することで、クオータフィリングの低次元強相関電子系に対するより深い考察を行った。 さらにこの系の関連物質として、β相バナジウムブロンズβ-A_<0.33>V_2O_5(A=Li,Na,Ag,Ca,Sr)の電荷秩序化相転移と、それに起因する異常物性の解明を目指す研究を開始した。この系の相転移に対する核磁気共鳴実験などを含む様々な実験結果を参照することにより、本研究では、この系の相転移がセルフドーピング機構による金属絶縁体転移であるという提案を行った。そして、これを最も簡単に実現する模型として、クオータフィリングの非対称梯子型ハバード模型を提案し、その電子状態を平均場近似や密度行列繰り込み群の手法などを用いて詳しく研究した。その結果、この模型が、相互作用の強度に関してある種のリエントラント型金属絶縁体転移を示すことを明らかにした。
|
-
[Publications] S. Nishimoto, Y. Ohta: "Ground-state Phase Diagram of the One-Dimensional・・・"Physical Review. B59. 4738-4745 (1999)
-
[Publications] S. Nishimoto, Y. Ohta: "Charge Dynamics of the Coupled Anisotropic t-J Ladders"Physica B. (印刷中). (2000)
-
[Publications] S. Nishimoto, Y. Ohta: "Metal-Insulator Transition in the Anisotropic Habbend・・・"Journal of Physics and Chemistry of Solids. (印刷中). (2000)
-
[Publications] S. Nishimoto, Y. Ohta: "Effects of Intersite Repulsion in the One-Dimensional・・・"Journal of Physics and Chemistry of Solids. (印刷中). (2000)