2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11640337
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
簑口 友紀 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (10202350)
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Keywords | 核形成 / 固体核 / 超流動 / ヘリウム4 / 超流体 / 固化 / 巨視的量子トンネリング / MQT |
Research Abstract |
前年度に得られたヘリウム4の超流体-固体転移のモデル自由エネルギーを詳細に検討して論文にまとめ、8月のQFS2001(量子流体・個体についての国際シンポジウム2001年)で発表した。 丁度スピノーダル圧(これ以上の圧力では、超流体は不安定になる)の検証が、フランスのバリバーらによって計画されたため、それについての定量的な値を計算し、融解圧_+60barと見積もった。 同会議では、イスラエルのマルコビッツらによる興味深い報告があり、それによれば固体ヘリウムと容器壁の結晶の対称性が一致すれば固体は壁に濡れ、その際格子定数は異なっても良い。これは、我々の結果(過加圧下の超流体は、密度変化に作用する摂動には安定であるが、並進対称性を破る摂動に対しては容易に(固体への)インスタビリティーを生じる。)とコンシステントであり、壁近くでの超流体の固化について、以下のような定量的な計算を行う契機となった。 壁近くでの超流体-固体転移は、壁のもたらすファンデルワールスポテンシャルのもとで、非線形自由エネルギーに従う2変数(密度と秩序)の分布を計算する必要がある。これは、計算機を用いて数値計算を行うより他はない。現時点では、壁と垂直方向に一次元に変化する場合のみを扱い、壁と水平方向の変化は考えない。(すなわち、核生成は扱わない。)まず、壁表面は完全になめらかで水平とする。プレリミナリーな結果として、融解圧下では壁直上の「第一原子層においてのみ」上記のスピノーダル圧を越え、第二層目の固化に引きずられて固化することがわかった。すなわち、壁の原子スケールのポテンシャルの凹凸(並進対称性を破る場)は、壁を離れる方向では非常に短距離で消失するため、通常無視されがちであったが、じつは壁直上の原子層に働くこの場が、固化には重要な働きをしていることを示唆している。現在、この方向に沿って、研究を進めている。
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