1999 Fiscal Year Annual Research Report
NMR法によるd波超伝導渦糸の電子状態に関する研究
Project/Area Number |
11640350
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鄭 国慶 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 助手 (50231444)
|
Keywords | 高温超伝導 / 渦糸 / NMR / ナイトシフト |
Research Abstract |
銅酸化物で発見された高温超伝導の電子対の対称性はd波であることがほぼ確立した。d波超伝導の多くの性質がs波のものとは異なることが解明されて来た。しかし、d波超伝導の磁場に対する応答に関してはまだ不明な点が多い。特に、超伝導体中の磁場量子渦糸の中心やその周りの電子状態はわかっていない。本研究では、NMR(核磁気共鳴)法を用いて、高温超伝導体におけるd波渦糸の電子状態を実験的に研究する。初年度では、磁場中における高温超伝導体TlSr_2CaCu_2O_<7-σ>(過剰ドープ)の上部臨界磁場、状態密度及びその磁場依存性を交流帯磁率とナイトシフトの測定により調べた。 まず、交流帯磁率の測定から、本物質の上部臨界磁場が43テスラーと見積もられた。また、超伝導状態におけるスピンナイトシフトが磁場とともに著しく増大することがわかった。超伝導による反磁性の効果を補正すると、スピンナイトシフトは磁場の1/2乗で増大することがわかった。これはd波超伝導体中の渦糸に附随した準粒子によるものと考えられる。 超伝導体に磁場をかけると、磁場は量子化された渦糸の形で試料に侵入する。d波超伝導の場合、エネルギーギャップが異方的で、フェルミ面上にノードが存在する。理論的に、渦糸に附随した準粒子のエネルギー状態は、ノード方向に沿って渦糸の外まで伸張すると予想されている。さらに、これらの準粒子による状態密度は磁場の1/2乗の関数で磁場と共に増大すると予想されている。したがって、過剰ドープ高温超伝導体で得られた本研究での結果は、理論と合致するものである。
|