2000 Fiscal Year Annual Research Report
強電子相関効果の発現するTT-電子系有機化合物の熱力学的研究
Project/Area Number |
11640362
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中澤 康浩 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60222163)
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Keywords | 電子相関効果 / Mott転移 / 電荷秩序 |
Research Abstract |
平成12年度は、前年度に主として行ったダイマー系のκ-(BEDT-TTF)_2X塩に関する金属-絶縁体転移近傍での測定を継続しながら、研究のもう一つの大きな課題である非ダイマー系での測定にも着手した。これらの塩では、分子間で働く、長距離のクーロン反発Vにより、電荷の秩序だった凍結がおこり、本来とるべき金属的な性質が失われ、絶縁化することが知られている。この中でも、(DIDCNQI)_2Ag系は、分子が一次元的なカラム構造に配列し、約220Kで電荷秩序の形成、より低温領域の5.5Kで反強磁性転移を示す事が知られている。平成12年3月の大阪大学への転任に伴い、小型熱緩和法による測定セルを新たに作成し、大阪大学既設の^3He吸着型冷凍装置にセットアップした。冷凍機の立ち上げと検出系の整備を行い、測定を行った。その結果、(1)5.5Kの反強磁性転移点付近では、大きな熱異常はない、(2)最低温度領域で温度の一乗に比例する項があり、1次元的なスピン励起の存在を示唆する、(3)1K以下の低温領域で分子中のヨウ素の原子核に由来するショットキー熱容量が現れる、という3点が明らかになった。 さらに、磁場中での熱容量測定を行ったところ上記(2)の温度に比例する項が、外場の印加に伴い急速に減少し、8Tで半分程度になることが判明した。この事は、1次元的なスピン励起が、磁場の印加により押さえられ、系がより三次元的に変化して行く事を示唆している。一方、220K近辺の電荷秩序形成にともなう相転移点近辺でも、現在までの測定からは大きな熱異常は観測されていない。しかしながら、この温度より低温での広い温度範囲に渡って、非デバイ的な熱容量の振る舞いが見られ、電荷秩序状態中での格子熱容量が通常の場合と大きく異なっている可能性がある事を示唆している。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Y.Nakazawa,H.Taniguchi,A.Kawamoto and K.Kanoda: "Electronic Specific Heat of BEDFTTF Based Organic Conducors"Physica B. 281・282. 899-900 (2000)
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[Publications] Y.Nakazawa,H.Taniguchi,A.Kawamoto,K.Miyagawa,K.Hiraki,and K Kanoda: "Thermodynamic Studies of Electron Correlation Effects on Organic Salts Based on BEDFTTF and DCNQI Molecules"J.Physics and Chemistry of Solids. 62. 385-388 (2001)
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[Publications] Y.Nakazawa,H.Taniguchi,A.Kawamoto and K.Kanoda: "Electronic Specific Heat at the Boundary Region of Mott Transition in Two-Dimensional Electronic System of k-(BEDFTTF)_2Cu[N(CN)_2]Br"Physical Review B. 61. R16295-16298 (2001)
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[Publications] H.Fujiwara,E.Fujiwara,Y.Nakazawa,B.Zh.Narymbetov,K.Kato,H.Kobayashi,A.Kobayashi,M.Tokumoto,P.Cassoux: "A Novel Antiferromagnetic Organic Superconductor, k-BETS_2FeBr_4"J.American Chemical Soolety. 123. 306-314 (2001)