1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11640379
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小田垣 孝 九州大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90214147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉森 明 九州大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90260588)
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Keywords | ガラス転移 / モードカップリング理論 / トラッピング拡散理論 / ジャンプ運動 / 比熱のスケーリング / 二原子分子過冷却液体 / 分子動力学シミュレーション / Johari-Goldstein過程 |
Research Abstract |
本研究では、まず過冷却液体のガラス過程においてみられる原子のジャンプ運動のジャンプ率分布を化学反応理論を援用して研究した。ジヤンプ率分布がべき関数で与えられることを示し、さらにそのべきが密度揺らぎにおける遅いモードと速いモードの寄与の比で与えられることを示した。すなわち、温度が低下するとともに、波数空間において局在する領域が出現し、温度の低下と共にその領域が広がっていく。密度揺らぎに対するこれらの波数領域の寄与の比がべきを決めることになる。これは、ガラス転移のモードカップング理論とトラッピング拡散理輪との関係を結びつける第一歩であり、ガラス転移過程の統一的理解への重要なステップとなるものである。ついで、ガラス転移点近傍の比熟の実験データの解析を行った。温度Tにおける過剰エントロピーをSc(T)とすると、脆弱ガラスについては比熱が[TSc(T)-TgSc(Tg)]でスケールされることを示した。このパラメーターは、緩和時間をスケールするものでもあり、この結果は動的性質と熱力学性質の統一的理解が可能であることを示している。さらに、アルコール系などの強いガラス形成物質の比熱のこのようにスケールされないことが示され、緩和過程の違いが比熱のスケーリングのされ方に反映されることを示している。 これらの研究と並行して、二原子分子の過冷却状態における緩和過程について理論的解析および計算機シミュレーションを行った。まず、密度揺らぎの感受率が重心の緩和と重心回りの相対運動の寄与の和として表されることを示した。ついで、シミュレーションにより二原子分子の回転緩和の特徴を明らかにした。回転緩和は、ある温度以下で並進運動による緩和過程と分離し、またアーレニウス型の緩和となることをしめした。これは、有機分子などのガラス化過程で見られるJohari-Goldstein過程と同じ特微であり、Johari-Goldstein過程が分子の内部自由度に起因することを示唆するものである。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] T.Odagaki: "Non-Gaussianity in the Frequency Domain"AIP proceedings. 469. 484-489 (1999)
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[Publications] M.Kawasaki: "A bsence of self-averaging in the complex admittance for transport through random media"Phys.Rev.E.. (印刷中). (2000)
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[Publications] Y.Kubota: "Propagation of solitons in the Toda lattice with an impure segment"Phys.Rev.E.. (印刷中). (2000)
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[Publications] T.Odagaki: "Microscopic derivation of jump rate distribution and the glass transition"J.Phys. : Condens.Matter.. (印刷中). (2000)
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[Publications] J.Koga: "Stochastic orientational relaxation of a plastic crystal"J.Phys. Chem.. (印刷中). (2000)
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[Publications] T.Odagaki: "Scaling of the specific heat of fragile -glass formers near the glass transition temperature"J.Phys. Jpn.. (印刷中). (2000)
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[Publications] 小田垣 孝: "基礎科学のための数学的手法"裳華房. 印刷中 (2000)
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[Publications] 小田垣 孝: "つながりの科学-パーコレーション-"裳華房. 印刷中 (2000)