2001 Fiscal Year Annual Research Report
電子・陽電子を用い多原子分子の量子状態・相互作用ダイナミックスを探る
Project/Area Number |
11640397
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
季村 峯生 山口大学, 工学部, 教授 (00281733)
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Keywords | 電子 / 陽電子 / 共鳴 / 散乱断面積 / C_6H_6分子 / C_6F_6分子 |
Research Abstract |
電子・陽電子衝撃によるC_6H_6及びC_6F_6分子及ぴ他の炭化水素とハロゲン化炭化水素分子の全散乱過程とPs生成断面積過程についてのダイナミックスの違いと類似について、比較論的知見を得るため、実験と理論研究を実施した。これら2種類の分子はともに同じ分子の形をしているが、核になるC原子と結合している原子がF原子とH原子である点が異なる。これら分子の比較から、F原子群とH原子群による分子の電子状態のみならず、幾何学的空間の広がりの効果が電子・陽電子散乱に与える影響についての知見も得られ、大変興味がある問題を提供している。ここで得られた知見から、分子の形は同じでも大きさの異なる原子(群)が分子に結合している場合の一般的規則性についての理解の基礎が得られると考えられる。更にC_6H_6分子での陽電子衝撃による全散乱断面積は、衝突エネルギーが2eVより低いところから急に大きくなる(〜10^<-14>cm^2)ことが、また電子衝撃では0.2eVより低いところから全散乱断面積の急激な増加(〜10^<-14>cm^2)が初めて確認された。この散乱エネルギー領域では弾性散乱と振動回転励起が主な過程となることが知られているが、振動回転励起断面積の大きさはたかだか10^<-17>cm^2程度で有ることが知られている。したがって、この電子・陽電子衝撃による全散乱断面積の急激な増加はvirtual stateによる影響と考えられる。もし陽電子散乱でvirtual stateが有るとすれば、陽電子が分子の場に一時的に捕まる共鳴状態の存在も可能となり、今まで世界中の電子・陽電子散乱研究者が捜し求めながら確認できなかった陽電子の共鳴状態の傍証を我々が得たことになり非常に興味深い研究である。またこの研究は新しい物理の発展に繋がり得る重要な研究と言える。これら一連の結果はアメリカ物理学会誌やレビュー本等に発表した。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Kitajima, Kimura et al.: "Angnlar distribution measuremats for spin-orbit state-resolved SZP photoerectrons"Physical Review A. 63. R050702-R050704 (2001)
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[Publications] 季村, 立川, 平尾: "陽電子は分子と結合状態を作れるか?"現代化学. 3月号. 16-22 (2001)
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[Publications] R.Suzuki, M.Kimura et al.: "Electron capture dynamics in collisions of Si^<4f> with He."Physical Review A. 63. 042717-042723 (2001)
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[Publications] C.M.Dutla, M.kimura et al.: "Change transfer cross sections in collisions of grand Na with."Physical Review A. 63. 0228091-0228095 (2001)
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[Publications] M.Kitajima, M.Kimura et al.: "Differential cross sections for vibrational excitation of CO_2"J. Physics B. 34. 1929-1940 (2001)
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[Publications] M.Kimura et al.: "A comparative study for electron and positron scattering"J. Chemical Physics. 115. 7742-7449 (2001)
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[Publications] Buenker, Kimura et al.: "Ab initio calculations of excited state potentials"Wiley. 36 (2001)