1999 Fiscal Year Annual Research Report
夏季アジアモンスーンとエルニーニョ南方振動の相互作用に関する研究
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11640430
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
川村 隆一 富山大学, 理学部, 助教授 (30303209)
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Keywords | モンスーン / ENSO / エルニーニョ |
Research Abstract |
NCEP/NCAR再解析データを外力として海洋大循環モデルの数値実験を行った結果,以下に示すように夏季アジアモンスーンとENSOのカップリングにインド洋の大気海洋相互作用が重要な役割を果たしていることが見出された. 強モンスーン年の春季にインド洋の赤道以北で対流活動が活発化し,赤道ロスビー波の励起により赤道以北では大気下層で西風偏差が強化される.この時期基本場は東風なのでスカラー風速は弱まり海面からの蒸発が抑制される.一方,南半球側では東風偏差が卓越,逆にスカラー風速は増大し蒸発が活発になる.これらの海域での大気海洋間の正味の熱フラックスに対する実質的な寄与は潜熱フラックスであり,主に潜熱フラックス偏差の南北の違いによって赤道非対称のSST偏差分布(赤道以北で高温,以南で低温)が形成されていると考えられる.対照的に,風強制に対する海洋表層の力学的応答は温度躍層付近にみられる水温偏差の東西非対称を生み出すが,SST偏差の南北非対称にはほとんど寄与していない.つまり,モデル結果からXie and Philander(1994)の風・蒸発・SST(WES)フィードバックにより,春季のインド洋SST偏差の南北非対称が維持されていると考えられる. WESフィードバックが生じる必要条件の一つは,ENSO現象に関連してフィリピン付近(赤道以北)に対流加熱偏差の中心が位置していることにある.南北非対称のロスビー型応答が西方へ伝わり,インド洋でWESモードを励起する.これがまさに熱帯太平洋のENSOシグナルがインド洋へもたらされることに他ならず,ENSOとモンスーンの"架け橋"になっている.
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Research Products
(1 results)