Research Abstract |
南部九州の鮮新世大規模火山活動の代表的な地域である肥薩火山区で以下のことが明らかになった.1.肥薩火山区は,幅20〜30km,長さ100kmの北西から南西に伸びる,やや北に膨らんだ帯状の地域である。2.肥薩火山活動は,層序,活動時期,活動様式,産状などから3つのステージ,すなわちステージ1(7.6〜2.5Ma),ステージ2(2.5〜2.0Ma),ステージ3(2.0〜0.4Ma)に区分される。また,各ステージの火山岩の分布は,火山区全域にわたっている。3.火山岩類は"低K安山岩"と"高K安山岩"に区分される。4.ステージ1では,西側で低K安山岩,東側で高K安山岩,ステージ2では,全域で高K安山岩,ステージ3では,西側で低K安山岩,東側で,高K安山岩が主体で,一部で低K安山岩が活動した。5.火山岩類の噴出量は,ステージ1 390km^3以上,ステージ2 110km^3,ステージ3 60km^3である。しかし,ステージ1は,地層の下限が不明で,少なくとも400km^3は越えるものと思われる。また,低K安山岩と高K安山岩の体積は,前者が336km^3以上,後者が224km^3である。6.肥薩火山岩類は,4つの分化トレンドと3つの親マグマが認められる。親マグマは,高K高Mg安山岩,低K高Mg安山岩,ソレアイト質玄武岩である。7.ステージ1では,ソレアイト質玄武岩と低K高Mg安山岩が密接に伴って産するが,それらは異なったマグマソースに由来する。高K高Mg安山岩もソレアイト質玄武岩,低K高Mg安山岩と異なったマグマソースから生成された。8.肥薩火山活動は,分布,活動様式,高K安山岩と低K安山岩の分布の特徴などは,典型的な沈み込み帯の火山活動とは異なっているが,化学組成は島弧火山岩の特徴を有している。9.肥薩火山岩のマグマソースは,かつて沈み込んだ海洋地殻や堆積物が大きく寄与している可能性がある。
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