2001 Fiscal Year Annual Research Report
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11640467
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Research Institution | Himeji Insititute of Technology |
Principal Investigator |
三枝 春生 姫路工業大学, 自然・環境科学研究所, 助手 (70254456)
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Keywords | 古脊椎動物学 / ゾウ上科 / 咀嚼 / 長鼻類 / 古第三紀 / 咬合面 / ゴンフォテリウム類 / DMA |
Research Abstract |
咬耗形象を最古の長鼻類であるフォスファテリウムから現生長鼻類まで観察し、これに前年度までの研究で明らかとなった微細咬耗形象の観察結果、頭蓋の形態を加味して、咬耗面形態の変遷をたどった。その結果、長鼻類の咬耗面形態およびその機能の変遷は大きく分けて三段階あることが明らかとなった。 第一の段階は、ギロチン型と命名したもので、典型的には、中新世の長鼻類であるダイノテリウムにみられる。そのもっとも初期のものは、最古の長鼻類であるフォスファテリウムに見られ、奇蹄類など、一般的な有蹄類の咬耗面が単純化したものである。エクトロフおよびそれに付随したファセットの退化が起きており、残存した頬舌方向に走る稜における垂直剪断機能が卓越している。食性は葉食性であると推定される。 第二段階はこのギロチン型から派生したものであり、鈍頭歯をもつ長鼻類がこれにあたる。これはゴンフォテリウム型と名づけた。ゴンフォテリウム型の咬耗面形態は、その大きさを除けば霊長類およびペッカリーなど原始的なブタ類の臼歯と非常に良く似ている。この段階では、上述のギロチン型で見られたファセットにくわえ二次的なファセットが不規則に発達している。これら二次的なファセットの個体変異は大きく、この変異の大きさ自体が、このファセットが2次的なものであることを示している。ゴンフォテリウム型の咬耗面形態は、少なくとも2回独立に長鼻類の系統で現れたらしい。ゾウ上科およびその姉妹群に見られるが、同時にメリテリウム類でも見られる。メリテリウム類には多くの原始的な形質が見られることから、その臼歯も長鼻類のもっとも原始的な状態を示していると考えられてきたが、今回の咬耗面形態の分析からは、長鼻類のもっとも原始的な臼歯およびその咬耗面はギロチン型であり、メリテリウム類のそれはむしろそれから派生したものであることが明らかとなった。 第三の段階は、現生ゾウ類およびステゴドン科で見られるものであり、前後方向の顎運動によって特徴付けられる。これは前後運動型と名づけた。ここで興味深いのは、同じ前後運動型の長鼻類が共存していたことである。前後運動型でも、歯冠高や稜頻度などの形態の差があった場合、それぞれ別の環境を好んだ可能性があり、それは、臼歯の微細な咬耗形象にも反映しているかもしれない。しかし、前後運動型の長鼻類の共存は知られているが、その個体数の差に付いては報告が無かった。そこで、中国のゾウ類とステゴドン類化石の産出頻度の差から、個体数の差を類推した。その結果、中国の更新世ではステゴドン類が卓越していることが明らかとなった。将来的な課題として、ゾウ類とステゴドン類の臼歯の微細な咬耗形象と食性、その種が卓越する環境の関連を調べる必要が出てきた。
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Research Products
(1 results)