1999 Fiscal Year Annual Research Report
全斑晶分析計画-マグマ溜り境界層の構造と進化の解明
Project/Area Number |
11640475
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
海野 進 静岡大学, 理学部, 助教授 (30192511)
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Keywords | マグマ溜り / ルーフゾーン / メルトレンズ / 結晶マッシュ / オマーンオフィオライト / 赤城火山 / 箱根火山 |
Research Abstract |
今年度は当初の予定どおり,赤城火山場ノ口軽石ならびに行川軽石,箱根火山東京軽石,ニュージーランドのタウポ火山タウポ軽石についての試料採集をほぼ完了した.また,オマーンオフィオライトのガブロについても調査・試料採集を行った. 本研究では火山岩中の斑晶を用いてマグマ溜り境界層の結晶マッシュの実態を明らかにすることを目的としているが、その具体的なイメージを描くためには噴出物の解析のみならずマグマ溜りの境界層そのものが結晶化した貫入岩体についての知見も重要である,そこでかつての中央海嶺で形成された海洋プレートの一部が陸上に乗り上げたオマーン・オフィオライトにおいて,とくにマグマ溜まりのルーフゾーンの構造に注目して調べた.野外での観察を総合すると,ルーフゾーンは上位から粗粒ドレライト,ぺグマタイト状ガブロ,塊状ガブロ,薬理構造を有するガブロから成る.粗粒ドレライトは塊状ガブロと比べ斜長石の累帯構造が顕著なことと,両者の境界にペグマタイト状のガブロか挟まれていることから,前者はメルトレンズの天井部で、後者はメルトレンズの底で結晶化したと考えられる.従来の研究では海嶺下のマグマ溜りのメルトレンズが、深成岩体のどの部分に相当するのか不明であったが、今回の調査でこの点を明確にできた.また,岩脈および溶岩はいずれも無斑晶質であることから,次の2点が示唆される:1)斑晶はこのようなドレライト組織をもったルーフゾーンでは生じない,2)たとえ集積層に代表されるな結晶マッシュがあっても,マッシュがメルトレンズの下にあってメルトときれいに分離している場合にはマグマ中に斑晶として取り込まれることはない.これらの点は斑晶に富んだ島弧火山のマグマ溜りの構造を考える上で重要な指針を与えるものと思われる. 現在,新規導入した加熱ステージの調整中である.今後は赤城火山湯ノ口軽石ならびに行川軽石,箱根火山東京軽石オマーンオフィオライトのガブロ中の斑晶鉱物について,加熱ステージを用いた包有物の加熱-冷却実験を行い,均質化温度,生成物の組織決定などの解析作業を進める予定である.
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