2000 Fiscal Year Annual Research Report
全斑晶分析計画-マグマ溜り境界層の構造と進化の解明
Project/Area Number |
11640475
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
海野 進 静岡大学, 理学部, 助教授 (30192511)
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Keywords | マグマ溜り / ルーフゾーン / メルトレンズ / マッシュ / 結晶 / ネットワーク / オマーンオフィオライト / 島弧火山 |
Research Abstract |
本研究では火山岩中の斑晶を用いてマグマ溜り境界層の結晶マッシュの実態を明らかにすることを目的としているが,その具体的なイメージを描くためには噴出物の解析のみならず,マグマ溜りの境界層そのものが固結した貫入岩体についての知見も重要である。そこで,昨年度に引き続きオマーン・オフィオライトの拡大軸ステージのマグマ溜まりルーフゾーンの調査と試料の分析を行った。また,沈み込みステージのマグマ溜まりの予察的調査と試料採集を行った。 拡大軸ステージのルーフゾーンは上位から粗粒ドレライト,ペグマタイト状ガブロ,塊状ガブロ,葉理構造を有するガブロから成る。粗粒ドレライトは塊状ガブロと比べ,斜長石の累帯構造が顕著なことと,両者の境界にペグマタイト状のガブロが挟まれていることから,前者はメルトレンズの天井部で,後者はメルトレンズの底で結晶化したと考えられる。葉理ガブロの斜長石は均質なコアを持ち,リムでわずかに正累帯する。それに対して塊状ガブロの斜長石は均質である。両ガブロともに単斜輝石は緩やかに正ないしは逆累帯する。葉理ガブロの斜長石リムは13-30%の粒間メルトから晶出した。粗粒ドレライトの斜長石は顕著な正累帯をし,コアは塊状ガブロや葉理ガブロに比べ幅広い組成を有し,単斜輝石は65-75%の粒間メルトから晶出し,正累帯する。また葉片状の単斜輝石を有する粗粒ドレライトの斜長石コアは互いに連結したネットワークを形成し,単斜輝石は幅広い組成範囲と複雑な累帯構造を示す。このことは結晶分化では説明できず,斜長石のネットワーク間を様々な組成のメルトが自由に通り抜けることによって生じたと考えられる。 一方,沈み込みステージの深成岩体は非常に不均質で,結晶マッシュへの岩脈やシートの貫入とマグマ混合,マッシュの再溶融などの複雑な現象が長期間にわたって繰り返された様子を読みとることができる。このような産状はまさに島弧火山のマグマ溜りに期待されるイメージと一致する。
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