2000 Fiscal Year Annual Research Report
天皇海山群推古海台およびオホーツク海から得たピストンコアを用いた対比的古海洋研究
Project/Area Number |
11640491
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
加藤 義久 東海大学, 海洋学部, 教授 (00152752)
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Keywords | 古海洋 / 気候変動 / 氷期-間氷期 / 還元態硫黄 / 酸化還元環境 / 無酸素事件 / オパール / 生物生産 |
Research Abstract |
更新世に激変した地球規模の気候変動は海洋環境を大きく変動させたと考えられる.そこで,天皇海山群推古海台から採取したコアを対象として,生物起源である炭酸カルシウム含有量の鉛直分布を明らかにした.また,オホーツク海コアを対象として,生物生産量の変動が海底境界層および堆積物の酸化還元条件に与えた影響を調べた. 1.推古海台MR4PCコアにおける炭酸カルシウムの変動 推古海台頂部(水深1855m,コア長13.37m)から採取したコアを分割し,合計686個の分析試料を調製した.コア中の炭酸カルシウム含有量は,表層1.5mは5-70%と変動が大きいものの,それ以深では50-90%で変動し,コア深度に対して増加傾向が認められた.本コアの年代は未だ不明であるので,詳細な議論は今後の課題である. 2.オホーツク海CM6PCコアにおける還元態硫黄の変動 本コアはオホーツク海でも最深部であるオホーツク海盆西端域の水深3000mから採取された.前年度までの成果として,本コア中には炭酸カルシウムが含有されていないこと,生物起源オパール含有量の鉛直分布から,生物生産は氷期最寒期に相当すると推定される8-10m層では低く,氷期以降ではむしろ高いことが判った.そこで本年度では,コア中の還元態硫黄(野いちご状パイライトの成分)の分析方法を開発し,その含有量を測定した. 還元態硫黄の鉛直分布は,オパールのそれと全くミラーイメージであった.すなわち,オパール含有量の低い低生物生産の時代である氷期最寒期に,還元態硫黄含有量が増加していることが判った.このことは,氷期には,有機物の無酸素代謝によって,還元態硫黄の供給源となる硫化水素の発生が卓越していたことを示唆している.現在の堆積物中においても続成的な硫酸還元が起こっていることは否定できないが,氷期最寒期の時代において,オホーツク海盆底層水もしくは堆積物表層が無酸素で硫化水素を含むような強い還元環境であったと推定される.
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[Publications] Fukue,M,(他3名): "Degree of pollution for marine sediments."Engineering Geology. 53. 131-137 (1999)
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[Publications] Fukue,M,(他2名): "Cementation of soils due to calcium carbonate."Soils and Foundations. 39. 55-64 (1999)
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[Publications] Kitazato,H.(他10名): "Seasonal phytodetritus deposition and responses of bathyal benthic foraminiferal populations in Sagami Bay, Japan."Marine Micropaleontology. 40. 135-149 (2000)
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[Publications] 加藤義久(他3名): "付加帯表層堆積物中の低塩分水について."月刊地球号外,海洋出版. 32. 82-89 (2001)