1999 Fiscal Year Annual Research Report
星間空間での多原子分子を触媒とする水素分子生成反応の可能性の探索
Project/Area Number |
11640502
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
相原 惇一 静岡大学, 理学部, 教授 (40001838)
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Keywords | 星間分子 / 多環式芳香族炭化水素 / PAH / PAH陽イオン / 触媒 / 水素分子生成反応 / 反応機構 / 密度汎関数法 |
Research Abstract |
宇宙では、水素は主として水素原子として存在するが、その一部は水素分子として存在する。高真空・極低温の宇宙で、どのようにして水素原子から水素分子ができるのかは、長年の謎である。有力な水素分子の成因としては、水素原子が星間塵の表面に吸着し、そこで2原子が会合し余分なエネルギーを放出して、脱着するという説があるが、この過程も速度論な問題が残されている。本研究では、密度汎関数法などを用いて、宇宙にあまねく存在する多環式芳香族炭化水素(PAH)の分子が触媒となって、水素原子から水素分子が生成する可能性を探索した。 今年度(初年度)の研究では、PAHのモデル化合物としてベンゼンとナフタレンを取り上げ、ROHF/PM3、B3LYP/3-21G、B3LYP/6-31G^<**>のレベルの計算を行った。いろいろな試行錯誤ののち、PAHが関わる水素分子形成反応の候補として、まず1個の水素原子がPAH分子中でCH結合を形成しているどれかの炭素原子に付加し、2個目の水素原子がそれを水素分子として引き抜く反応が有望であることがわかった。10K程度の極低温で反応が進行するためには、反応中間体や遷移状態の生成も含めて、反応を構成するすべての素過程が発熱反応でなくてはならない。計算結果によると、中性のPAH分子では、1個目の水素原子が付加する過程で小さな活性化エネルギーが必要であった。次いで、PAH陽イオンラジカルを触媒とする可能性を調べたところ、ベンゼンとナフタレンの両方の陽イオンラジカルで、すべての素過程が活性化エネルギーを必要とせず、10K前後の宇宙でも反応が進行しうることがわかった。 これと並行して、グラフ理論を用いでさまざまなPAH分子の反応の傾向を調べた。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Jun-ichi Aihara: "Reduced HOMO-LUMO Gap as an Index of Kinetic Stability for Polycyclic Aromatic Hydrocarbons"Journal of Physical Chemistry A. 103・37. 7487-7495 (1999)
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[Publications] Jun-lchi Aihara: "Why Are Some Polycyclic Aromatic Hydrocarbons Extremely Reactive?"Physical Chemistry Chemical Physics. 1・14. 3193-3197 (1999)
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[Publications] 相原惇一: "宇宙空間をただようフラーレン"季刊化学総説. 43・1. 245-245 (1999)