2001 Fiscal Year Annual Research Report
星間空間での多原子分子を触媒とする水素分子生成反応の可能性の探索
Project/Area Number |
11640502
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
相原 惇一 静岡大学, 理学部, 教授 (40001838)
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Keywords | 星間分子 / 水素分子生成反応 / ab initio分子軌道計算 / 触媒 / 多環式芳香族炭化水素 / アントラセン / ピレン / 芳香族性 |
Research Abstract |
宇宙にはソロ水素をもつ大きくてコンパクトな多環式芳香族炭化水素(PAH)が大量に存在する。本研究では、そのモデル分子としてアントラセン(C_<14>H_<10>)とピレン(C_<16>H_<10>)を選び、それらの陽イオン(PAH^+)を触媒となって水素原子から水素分子が生成する反応の可能性を検討した。水素分子生成反応には、下記の2つの素反応からなる反応を想定し、B3LYP/6-31G^<**>レベルの分子軌道計算を行った。 PAH^++H→hydro-PAH^+, hydro-PAH^++H→PAH^++H_2 これらの反応全体の反応熱は105.3kcal/mol程度(一定)である。アントラセン陽イオンの9位、ピレン陽イオンの1位へ水素原子が付加する素反応の反応熱は、それぞれ61.9、61.4kcal/molであり、いずれにも遷移状態は認められなかった。また、hydro-PAH^+がもう1個の水素原子と反応する素反応では、アントラセン陽イオン、ピレン陽イオンを触媒としたとき、その反応熱はそれぞれ43.4、43.9kcal/molであった。活性化エネルギーは両陽イオンともに0.5kcal/mol以下であった。 以上の結果から、大きな多環式芳香族炭化水素の陽イオン(PAH^+)を触媒とする上記の反応は、活性化エネルギーをほとんど必要とせず水素分子を生成すると推定される。また、PAH^+イオンが関与する副反応にも、活性化エネルギーを必要としない水素分子生成反応が多数あり、大きくてコンパクトなPAH^+は、極低温の星間空間での水素分子生成反応としてかなり有望と考えられる。 これとは別に、宇宙空間で反芳香族化合物が存在する可能性がきわめて小さいことを、星間分子およびその候補化合物の芳香族性の解析により明らかにした。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] J.Aihara: "Kinetic Stability of Metallofullerenes as Predicted by the Bond Resonance Energy Model"Physical Chemistry Chemical Physics. 3・8. 1427-1431 (2001)
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[Publications] K.Fujine, T.Ishida, J.Aihara: "Localization Energies for Graphite and Fullerenes"Physical Chemistry Chemical Physics. 3・18. 3917-3919 (2001)
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[Publications] J.Aihara: "Kinetic Stability of Carbon Cages in Non-classical Metallofullerenes"Chemical Physics Letters. 343・5-6. 465-469 (2001)
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[Publications] J.Aihara, M.Hirama: "There Are No Antiaromatic Molecules in Interstellar Space"Internet Electronic Journal of Molecular Design. 1・1. 52-58 (2002)