2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11640503
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
斉藤 真司 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70262847)
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Keywords | 溶液内化学反応 / 氷中のプロトン移動 / 液体の高次非線形分光 / 振動緩和 / 赤外分光 / 2次元赤外分光 / 固体液体相転移 |
Research Abstract |
本研究では、溶液内化学反応、溶液の高次非線形分光の理論解析を進めることを目標とした。さらに、水の結晶化過程の解析も行った。 QM/MM法を用いて氷中のプロトン移動のポテンシャルエネルギー面の解析を行った。氷中では水分子が4配位構造を取るが、プロトンが付加している水(H_3O^+)の周りの4分子との相互作用のうち1つは反発的なものとなっており、さらに、水とは異なりO-O間距離が容易に短くなれないために、H_3O^+が十分に安定化できず、また、プロトン移動に沿ったエネルギー障壁も約2kcal/molと低いために、低温にも関わらず高速なプロトン移動が起こることが明らかとなった。 高次非線形分光に関しては、一般化量子マスター方程式により水の(多次元)赤外分光の解析を行った。この方法では、密度行列のダイナミクスに溶媒の揺らぎが反映されており、凝縮系の緩和を詳細に解析することができる。この方法を用いて、重水中のHDO分子の振動緩和、赤外分光、2-photon IR echoの解析を行った。 固体-液体相転移に関しては、双極子相互作用しているStockmayer液体、水の結晶化過程の解析を行った。Stockmayer液体では、温度を下げていくとまず重心の秩序が揃うが、配向の揺らぎはより低温まで残ることが分かった。また、氷の方が液体よりも密度が小さいといった特異性があるが、密度揺らぎが水の結晶化において重要であることが明らかとなった。
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[Publications] S.Saito: "Water Dynamics ; Fluctuation, Relaxation and Chemical Reaction"Adv.Class.Trajec.Methods. 4. 105-151 (1999)
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[Publications] I.Ohmine: "Water Dynamics ; Fluctuation, Relaxation and Chemical Reactions in Hydrogen Bond Network Rearrangement"Acc.Chem.Res.. 32・9. 741-749 (1999)
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[Publications] C.Kobayashi: "Mechanism of Fast Proton Transfer in Ice ; Potential Energy Surface and Reaction Coordinate Analyses"J.Chem.Phys.. 113・20. 9090-9100 (2000)
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[Publications] 首藤啓: "内部自由度をもつハミルトン系の遅い緩和の起源"物性研究. 73・1. 63-83 (1999)