1999 Fiscal Year Annual Research Report
芳香族分子2量体カチオンの電子状態に対する理論的研究
Project/Area Number |
11640519
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
三好 永作 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 教授 (70148914)
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Keywords | 芳香族分子2量体カチオン / 分子軌道法 / MRSDCI計算 |
Research Abstract |
当初の計画では,フェノール2量体カチオンやベンゼンとナフタレンの混合2量体カチオンなどの2量体カチオンを先に計算する予定であったが,ベンゼン3量体カチオンはその平衡構造の中でプラス電荷がどのベンゼン環に存在するのかという大変興味深い問題に遭遇して,その計算をCASSCF/MRSDCI法のレベルで平成11年度に他の計算に優先して行った.計算の結果明らかになったことは次のことである.ベンゼン3量体カチオンの最安定状態は,3つのベンゼン環が平行に並んだD_<6h>サンドウィッチ構造(r_<12>=r_<23>=7.299a.u.)から中心のベンゼン環がずれたC_<2v>サンドウィッチ構造(ずれr_<12>=r_<23>=7.299 a.u.)の核間距離を持ち,(C_6H_6)_2^++C_6H_6の解離極限に対して0.43eVの結合エネルギーを持っている.これは,実測の結合エネルギーに近い値である.また.2C_6H_6+C_6H_6^+の解離極限に対して1.08eVの結合エネルギーで,得られた実測値(0.99〜1.23ev)との良い一致を示している. 計算で得られた電荷分布は,真中のベンゼン環に約0.9のプラス電荷があり,端末のベンゼン環には0.5のプラス電荷があるというものであった.この結果は,電荷の非局在化を仮定したヒュッケル計算の結果や実験家が提唱しているモデル(ベンゼン2量体カチオンとベンゼンモノマー)とは異なる,新しい知見である.
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