1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11640525
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 桂一郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (50114426)
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Keywords | サリチリデンアニリン / サーモクロミズム / 互変異性 / X線結晶解析 / 電子スペクトル |
Research Abstract |
サリチリデンアニリン類はサーモクロミズムやフォトクロミズムを示す代表的な化合物群の一つである.そのクロミズムは,OH形とNH形の間の互変異性に由来し,通常のサリチリデンアニリン類では,溶液中でも結晶中でもOH形が圧倒的に安定であることが知られている.ところが,サリチルアルデヒド側のベンゼン環にニトロ基を導入すると,互変異性の挙動が著しく異なることが報告されている.たとえば,3-ニトロサリチリデンアニリン(1)は飽和炭化水素溶液中,室温では,もっぱらOH形として存在するが,77KではNH形を含むアグリゲートとして存在するとの報告がある.これに対して結晶中の挙動については知られていない.本研究では,X線結晶解析と電子スペクトルから,1の結晶中ではOH形とNH形がほぼ同等で混在していることを見出した.この結果は,つぎの点で注目に値する.(i)母体化合物をはじめとする他のサリチリデンアニリン類とは対照的に,通常は不安定なNH形が1の結晶中ではOH形とほぼ同程度の安定性をもっている.(ii)1は結晶中と溶液中の挙動が著しく異なる.(iii) NH形が分子間水素結合によって安定化された例はいくつか知られているが,分子間水素結合が存在しないにもかかわらずNH形の存在割合が多くなった例はほとんど知られていない.2はそのめずらしい例である.これらの結果は,ニトロ基の電子的効果と結晶中の立体配座に及ぼすパッキングの効果を考えれば説明できることも示した.
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[Publications] 小川桂一郎: "Tautomerism of a Nitro Derivative of N-Salicylideneaniine in Crystals"Chem. Lett.. 657-658 (1999)
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[Publications] 小川桂一郎: "Thermochromism of Organic Crystals. A Cryatallographic Study on N-Salicylideneanilines"Crystal Engineering : From Molecule and Crystals to Materials. 469-479 (1999)