Research Abstract |
共同研究者の道端は,バナドサイトの細胞質に,生体内還元物質であるNADPHを産出する酵素群が存在することを突き止めた。一方,我々は,edta共存下で,NADPHが5価バナジウムを4価バナジウムに還元できることを既に報告している。そこで,本研究では,「どの様な配位子を共存させれば,NADPHによる5価バナジウムの4価への還元が進行するかについて系統的な研究を行い,還元に必要な条件を確立すること」を目的として,実験を行った。 昨年度のアミノポリカルボン酸を用いた研究に引き続き,今年度は共存配位子としてアミノ酸を用いた。可視吸収スペクトルとESRスペクトルに基づいて得られた共存配位子のバナジウム還元促進能に従って,今回使用した配位子を以下の3つのグループに分けた。第1グループ:his;第2グループ:asp,asn,glu,gln,thr,trp;第3グループ:gly,ser,met 第1グループは,明確に還元の進行が確認されたものである。ヒスチジンのみが,このグループに属する。第3グループは,還がほとんど進行しなかったものであり,第2グループは,第1と第2の中間に属し,不完全ながらも還元が観測されたものである。 グループの特徴を考えてみると,3座配位子で,低酸化状態を安定化するソフトな官能基を持つヒスチジンが,第1グループに属している。2座配位子,あるいは3番目の官能基の配位能力が弱くて実質的には2座配位子と考えられるものは,第3グループに属している。他の3座配位子は,錯形成能の違いによって,属するグループが異なってくる。今後,錯形成定数および電気化学的性質の見地から,共存配位子のバナジウム還元促進能をさらに詳しく調べ,より明確な基準を確立することが重要である。
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