1999 Fiscal Year Annual Research Report
金属イオン保持による新規な層状空間の構築と金属錯体のインターカレーション
Project/Area Number |
11640564
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松林 玄悦 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90029182)
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Keywords | インターカレーション / オキソバナジウムリン酸塩 / 五酸化バナジウム / パラジウム錯体 / 白金錯体 / ピリジル錯体 |
Research Abstract |
層状構造をもつ物質の層間空間に分子やイオンを挿入(インターカレーション)した層間化合物において、挿入されたゲスト分子やイオンに新しい物性や反応性を期待することができる。本研究では、VOPO_4あるいはV_2O_5の層状空間に、酸化電位の低い金属錯体あるいは酸化されやすい対イオンをもつ金属錯体を挿入することにより、ゲスト錯体分子の特異な物性、機能あるいは反応性を探索することを目指した。まず、多硫黄ジチオレート配位子であるC_3S_5^<2->やC_8H_4S_8^<2->(L)をもつ金属錯体のうち、低い酸化電位を有する[(C_5H_5)CoL]および[C_5Me_5)CoL]を選び、エタノール中に懸濁したVOPO_4・2H_2Oまたはゲル-V_2O_5・1.6H_2Oと反応させて層間化合物を得ようとしたが、錯体の溶解度が極めて悪く、まだ層間化合物の合成に至っていない。一方、ピリジルおよびイミン窒素をもち、さらにジメチルアミノアルキル基を有する配位子C_5H_4N-CH=N(CH_2)_nNMe_3^+I^-(n=2および3)を選び、その金属錯体を合成し、インターカレーションを検討した。この配位子は、酸化されやすいI^-イオンを対イオンに有するので、V_2O_5・1.6H_2Oとの反応により、層間に配位子のカチオン部分が挿入した(V_2O_5あたり0.15分子)層間化合物を得ることができた。さらに、ピリジルおよびイミン窒素でパラジウム(II)あるいは白金(II)イオンにキレート配位させた錯体の挿入を行っている。また、C_5H_4N-CH=N(CH_2)_2NMe_2とPd(C_6H_5CN)_2I_2の反応から、この配位子が三座配位した[Pd{C_5H_4N-CH=N(CH_2)_2NMe_2}I]^+I^-を得ることができ、この錯体インターカレーションを検討している。なお、この配位構造は、[Pd{C_5H_4N-CH=N(CH_2)_2NMe_2}I][Pd_2I_6]のX線結晶解析によって明らかにしている。
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