1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11640570
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Research Institution | Himeji Institute of Technology |
Principal Investigator |
小澤 芳樹 姫路工業大学, 理学部, 助教授 (40204200)
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Keywords | X線構造解析 / 光励起 / 多核金属錯体 / 放射光 / イメージングプレート |
Research Abstract |
今年度の研究計画に基づき,光照射下での単結晶構造解析に必要な実験手法と装置の開発をおこなった.今回得られた成果および次年度以降の課題は以下のとおりである. 1.実験対象に適当な試料の探索では,金属-金属間に直接相互作用がある多核錯体を中心に,寿命の長い励起三重項を持つ物質に注目して,単結晶の作成と励起状態からの発光スペクトルの測定をおこなった.多核銅錯体ではヨウ素とピリジンを配位子とする4核錯体[Cul(py)]_4,およびピコリンを配位子とする無限鎖構造を持つ[Cu_2l_2(pic)]が,紫外光照射下で黄色から橙色のリン光を発し,励起状態で金属-金属間距離が大きく構造変化することが期待でき,対象化合物として有望であることが分かった.次年度以降は,物質探索をさらにすすめると共に,結晶中での光励起分子の濃度を正確に見積もるために,励起寿命の測定法の開発が課題となっている. 2.光照射時のX線回折強度の変化を精密に測定する方法として,2次元検出器であるイメージングプレートに光照射時と非照射時のX線回折像を位置をずらして記録する多重露光法を考案し,測定条件や誤差の見積もりなどをおこなった.SPring-8の放射光を用いた実験では,多重露光されたX線回折像より,それぞれのX線回折像を独立に分離して積分強度を算出することが可能になった.1Pの多重露光法の長所は1P読み取り時におこるフレーム間での誤差をなくすことができ,強度積分時のバックグラウンドの状態変動が光照射/非照射時で異なることを最小限に押さえることができる.しかし記録されたX線回折像の時間による減衰が依然無視できず,この影響をなくすための測定手順や条件を探ることが次年度以降の課題となっている.
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