2000 Fiscal Year Annual Research Report
異方的分子間相互作用による伝導性超分子フレームの構築と複合物性の開拓
Project/Area Number |
11640575
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
今久保 達郎 理化学研究所, 分子物性化学研究室, 研究員 (60291332)
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Keywords | テトラチアフルバレン / 分子性導体 / 結晶構造制御 / ヨウ素 / ピラジン / 超分子 |
Research Abstract |
結晶構造制御された分子性導体の新しい機能開発を目指し、ピラジン縮環型含ヨウ素ドナー分子DIPS(Diiodo(pyrazino)diselenadithiafulvalene)が構築する六方晶系の分子性導体について研究を行った。DIPS系カチオンラジカル塩としては、八面体あるいは四面体型アニオンの塩について報告しているが、これらは全て室温から半導体であった。そこで金属状態の安定化を目指し、対イオン・ドナー分子の両面からの物質探索を行った。 [金属的物性を示す六方晶系の発見] 昨年度までに得られた塩のうち、直線型アニオンであるAuBr_2の塩については室温付近で金属的な挙動を示すことが判っていたが、構造が未確定であった。今回、X線構造解析に耐えうる単結晶作成条件の検討を進めたところ良質の単結晶が得られ、六方晶の構造をとっていることが確認された。 [セレン誘導体への展開] TTF骨格内に含まれる硫黄原子を順次セレン原子へと置換した、ジセレナジチアフルバレン(DSDTF)およびテトラセレナフルバレン(TSeF)誘導体の合成ついて検討を行った。これらの硫黄-セレン置換は、電気伝導に直接関わっている分子内側に原子半径の大きなセレン原子を導入することにより分子間お接触が増大し、なおかつTTFとTSeFの結晶構造の類似性から、ユニークな結晶系を保持したままでの金属状態の安定化が期待できる。本年度は3置換体であるDIP-TSTF(Diiodo(pyrazino)triselenathiafulvalene)、および4置換体であるDIPSe(Diiodo(pyrazino)tetraselenafulvalene)について、25-40%の収率で得られることを確認し、中性分子の構造と物性について検討を行った。伝導性カチオンラジカル塩の作成については来年度の課題である。
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