2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11640579
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
水口 仁 横浜国立大学, 工学部, 教授 (90281005)
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Keywords | 有機顔料 / サーモクロミズム / 結晶構造 / 電子構造 / 分子間相互作用 / ペリレン / ピロロピロール / インジゴ |
Research Abstract |
ペリレン顔料の固体状態における熱的な挙動を相転移(分子配列の変化)とサーモクロミズムの視点から検討を行って来た。ペリレンの溶液スペクトルはペリレン骨格に結合する置換基には寄らずほぼ同じ吸収スペクトルを示すが、固体状態では分子間の相互作用により赤、すみれ、栗色、黒と様々な色を呈する。特に色が深くなると分子間の相互作用が強く、サーモクロミズムを示すものが多いことがこれ迄の研究で明らかになってきた。本年度は以下に示す典型的な3種類のペリレン顔料について分子構造、結晶構造、分子間相互作用の立場から一連の研究を行った:赤色顔料(Pigment Red179)、栗色顔料(Pigment Red149)、黒色顔料(Pigment Black31)。遷移モーメント間の相互作用が小さな系(PR170)では分子の吸収に起因する1本の吸収帯が500nm近傍に出現し、この吸収帯が赤の原因である。これに対し、遷移モーメント間の結合効果が大きくなる(PR149)と600nmあたりに励起子の結合効果に由来する吸収肩が現れ、栗色となる。また、遷移モーメント間の相互作用が非常に大きな系(PB31)ではこの励起子バンドが独立した吸収帯となる。従って、PB31では分子固有の吸収帯と励起子結合効果に基づく吸収帯の2本で可視域を被い、黒色となることが結論された。更に、上記の第2の吸収帯は分子配列に依存する吸収帯であるので、温度変化により分子の格子点も揺らぎ、遷移モーメント間の結合状態も変化する。この揺らぎ効果により、吸収スペクトルに大きな温度変化が現れ、これがサーモクロミズムのメカニズムであることも明らかになった。このような分子配列の変化が可逆的に起こるような系ではサーモクロミズムを示すが、非可逆な場合には色変化も一過性である。非可逆的に黒色に色変化する新規なペリレン化合物も本研究の過程で見つかった。黒色ペリレンは液晶カラーフィルターのブラック・マトリックスの材料として有望であることが分かった。また。サーモクロミズムを使った光ディスクへの応用は上記のPB31で実現し、635nmのレーザーで反射率が"高"から"低"あるいは"低"から"高"に変化することを確認した。
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[Publications] 水口仁: "黒色ペリレンの発色メカニズム"色材協会誌. 73. 28-34 (2000)
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[Publications] J.Mizuguchi: "Correlation between crystal and electronic structures in diketopyrrolopyrrole pigments as viewed from exciton coupling effects"Journal of Physical Chemistry A. 104. 1817-1821 (2000)
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[Publications] S.Matsumoto,A.Endo and J.Mizuguchi: "Structure of magnesiumphthalocyanine complexes"Zeitschrift fuer Kristallographie. 215. 182-186 (2000)
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[Publications] 望月美里,千住孝俊,水口仁: "チオインジゴ誘導体の固体状態における分子間相互作用-エネルギー分割法によるアプローチ-"日本画像学会誌. 39. 421-428 (2000)
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[Publications] J.Mizuguchi and K.Tojo: "Structure of N,N'-Bis (3,5-xylyl) perylene-3,4:9,10-bis (dicarboximide)"Zeitschrift fuer Kristallographie-New Crystal Structures. (in press). (2001)
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[Publications] J.Mizuguchi: "Electronic Characterization of 1-Keto-4-thioketo-3,6-diphenylpyrrolo [3,4-c] pyrrole in Solution and in the Solid State"Journal of Physical Chemistry A. (in press). (2001)