1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11640581
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
御崎 洋二 京都大学, 工学研究科, 助教授 (90202340)
|
Keywords | テトラチアペンタレン / ドナー / 有機伝導体 / 超伝導 / 電気伝導度 / X線構造解析 / バンド計算 |
Research Abstract |
本研究では,二次元金属を容易に与えるπ電子骨格として,本研究者らにより開発されたテトラチアペンタレン(TTP)系ドナーに化学修飾を施すことにより三次元的な電子構造を有する分子性金属を構築することを目的としている。本年度に得られた成果は以下のとおりである。 (1)TTP骨格末端の1,3-ジチオール環を等電子構造のピラン,チオピランに置き換えた誘導体であるTM-TPDSおよびTM-PDSの陽イオンラジカル塩において,一次元スタックが互いに直交することにより三次元的な分子配列をとることを見出した。バンド計算によるとスタック間の重なり積分がスタック方向の十分の一程度存在する「擬三次元電子構造」を有することが明らかとなった。これらの塩の多くは金属的な電気伝導性を示し,低温において絶縁化するが,磁化率測定によるとこの絶縁化は一次元金属に見られるパイエルス転移ではなく,強い電子相関に由来するモット絶縁化であることが示唆された。 (2)上記分子性導体よりも強い三次元性が期待される分子として,セレノピランあるいはセレノメチル基を有するTM-SPDTおよびSM-(T)PDTの合成を行い,それらを用いたTCNQ錯体ならびに陽イオンラジカル塩の作製を行った。これまでのところ,TM-PDSと同様の擬三次元分子配列をもつ塩は得られていないものの,(SM-PDT)AsF_6(PhCl)において,通常の二次元導体に見られる分子短軸方向のside-by-side相互作用と異なり,分子長軸方向にピラン環およびセレノメチル基同士による酸素-酸素およびセレン-セレン接触が見られる擬二次元導体であることが明らかとなった。 上記の結果をまとめた論文については一部を除き投稿済みである。
|