1999 Fiscal Year Annual Research Report
生体弾性機能マトリックスの自己集合組織化:流動場に於ける構造形成と機能発現
Project/Area Number |
11640584
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
甲斐原 梢 九州大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90080564)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 浩義 久留米大学, 医学部, 講師 (10213175)
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Keywords | 弾性線維蛋白質 / エラスチン / 細胞外マトリックス / 自己集合組織化 / コアセルベーション / 生体機能材料 / 動脈硬化 / 粘弾性位相差顕微鏡 |
Research Abstract |
●弾性線維蛋白質-水系の温度依存性コアセルベーション:相分離の臨界特性 ウシ項靱帯由来α-エラスチン-水系の温度依存性コアセルベーションについて、臨界濃度0.11mg/ml付近の領域と臨界濃度から外れた領域の相分離特性を、レーザー光散乱測定及び位相差顕微鏡観察により詳細に検討した。動的光散乱測定により求まる前駆蛋白質集合体の流体力学的サイズは、総ての濃度領域で温度上昇と共に徐々に減少し、臨界領域では臨界温度21.5℃に近付くと、急激な流体力学的サイズの増加を経て相分離が誘起され、粒径が大きく粒径分布の広いミクロ相分離液滴の分離生成が観察される。一方、臨界濃度から充分に離れた領域では、前駆集合体の流体力学的サイズの更なる減少を経て、粒径が小さく粒径分布の狭い液滴の生成が観察された。 ●弾性線維蛋白質-水系の温度依存性コアセルベーション:疎水性相互作用と静電的相互作用 ウシ項靭帯由来α-エラスチン濃度0.3mg/ml付近では、前駆集合体の流体力学的サイズと相分離液滴粒径の大きさに関わる上記の二つの動的過程のクロスオーバーが観測される。金属塩化物共存下での相分離挙動の観察、更に、モデルポリペプチド([Val-Pro-Gly-Val-Gly]_n)を用いた測定の結果から、疎水性相互作用に基づく基本的な相分離特性と、荷電性ペプチド側鎖間の静電的相互作用の寄与が明らかとなった。 ●弾性線維蛋白質-水系の温度依存性コアセルベーション:剪断応力下での相分離特性 回転粘度計を用いた測定の結果、剪断応力の影響下では、ウシ項靭帯由来α-エラスチン-水系の温度依存性コアセルベーションについて、臨界濃度の変化は見られないものの、相分離開始温度は上昇する事を示す結果が得られた。一般的な球状のミクロ相分離液滴と共に観察される紐状集合体の形成が剪断応力下での相分離挙動を規定している事が示唆された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 甲斐原 梢: "Characterizations of Critical Processes in Liquid-Liquid Phase Separation of Elastomeric Protein-Water System -Microscopic Observations and Light Scattering Measurements-"Biopolymers. 53(発表予定:印刷中). (2000)
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[Publications] 甲斐原 梢: "pH-Induced Coacervation in complexes of Bovine Serum Albumin and Cationic Polyelectrolytes"Biomacromolecules. 1(発表予定:印刷中). (2000)
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[Publications] 甲斐原 梢: "Effects of Selective Metal Ion Binding on Structural and Functional Characteristics of Elastin Peptides"Peptide Science 1999. (発表予定:印刷中). (2000)
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[Publications] 甲斐原 梢: "遷移金属に富む原始海洋中で生命組織体が如何に形成されたかを探る -遷移金属塩化物による蛋白質の自己集合組織化のメカニズム-"財団法人ソルト・サイエンス研究財団助成研究報告集. (発表予定:印刷中). (2000)
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[Publications] Paul.L.Dubin: "Formation and Properties of Polyelectrolyte-Colloid Coacervates"Proceedings of the 73rd ACS Colloid and Surface Science Symposium. (発表予定:印刷中). (2000)